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ペロブスカイト太陽電池とは?仕組みとメリット・将来性を解説

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この記事のポイント

ペロブスカイト太陽電池は、結晶構造を持つ化合物を発電層に使う次世代太陽電池で、薄く軽く低コストに製造できる。2026年3月に積水化学がフィルム型製品を事業化し、政府は2040年までに20ギガワット規模の普及を目指している。

ペロブスカイト太陽電池とは?仕組みとメリット・将来性を解説

「ペロブスカイト太陽電池という言葉をよく聞くようになったが、従来の太陽光パネルと何が違うのか、実用化がどこまで進んでいるのかがよくわからない」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • ペロブスカイト太陽電池の仕組みと構造
  • 従来のシリコン太陽電池との違いとメリット
  • 2026年時点の実用化状況と将来性

ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽く、低コストで製造できる次世代の太陽電池で、日本発の技術として世界中から注目を集めています。

基礎知識から仕組み、メリット、実用化の状況まで押さえておけば、この技術が自社や暮らしにどう関わってくるのかが見えてきます。ここから順に詳しく見ていきましょう。

ペロブスカイト太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池とは、日本の再生可能エネルギーとは何かという議論の中でも特に注目されている、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ化合物を発電層に使う次世代の太陽電池です。従来のシリコン太陽電池と同じく光エネルギーを電気に変える仕組みですが、材料や製造方法が大きく異なります。次世代太陽電池と呼ばれる理由は、薄さや軽さ、製造のしやすさなど、シリコン系にはない特性を持つためです。

ペロブスカイト結晶構造とは

ペロブスカイト結晶構造とは、A・B・Xという3種類のイオンが1対1対3の比率で立方体状に配列した構造のことです。Aには有機アンモニウムやセシウムなど、Bには鉛やスズなど、Xにはヨウ素や臭素などが用いられます(なお、Bに鉛を含むことはペロブスカイト太陽電池のデメリットとして環境面での課題とされています)。この構造式は化学式でABX3と表され、鉱物のペロブスカイトと同じ構造を持つことが名前の由来です。

A・B・Xそれぞれの位置に異なる元素を組み合わせられる点も特徴です。組み合わせを変えることで、電気的・光学的な性質を調整でき、用途に応じた発電層を設計しやすくなります。

太陽電池としての発電の仕組み

ペロブスカイト太陽電池は、光がペロブスカイト結晶に当たると電子とホール(正孔)という2種類の電荷が発生し、電子とホールがそれぞれ別の電極に移動することで電流が流れます。この基本原理は、シリコン太陽電池をはじめとする多くの太陽電池と共通しており、一般的な太陽光発電と風力発電の比較における発電原理のベースにもなっています。

電子とホールが電極にたどり着くまでの間に再結合してしまうと発電のロスにつながるため、いかに効率よく電極まで運ぶかが変換効率を左右します。ペロブスカイト結晶は電荷の移動距離が短く済む構造のため、少ないエネルギー損失で発電できる点が強みです。

次世代太陽電池と呼ばれる理由

ペロブスカイト太陽電池が次世代太陽電池と呼ばれる理由は、材料をフィルムなどに塗布や印刷する方法で製造でき、従来のシリコン太陽電池のような高温での結晶成長工程が不要だからです。製造工程を簡略化できるため、量産時のコストや消費エネルギーを抑えやすくなります。

薄くて軽く柔軟性があるため、これまで太陽光パネルを設置できなかった曲面や壁面にも設置できる点も、次世代技術として期待される理由のひとつです。日本発の研究として世界的な開発競争の中心にあることも、このペロブスカイト太陽電池への注目度を押し上げています。

ペロブスカイト太陽電池の構造と発電の仕組み

ペロブスカイト太陽電池は、透明電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、裏面電極という5層のサンドイッチ構造でできており、ペロブスカイト太陽電池を開発する企業がそれぞれの層の素材改良を競っています。中心にあるペロブスカイト層が光を吸収する主役で、上下の輸送層が発生した電子とホールをそれぞれの電極へ運ぶ役割を担います。

5層構造でできる発電の流れ

光がペロブスカイト層に届くと、光のエネルギーによって電子とホールが生まれます。電子は電子輸送層を通って透明電極へ、ホールは正孔輸送層を通って裏面電極へと、それぞれ逆方向に移動します。

電子とホールが別々の電極に集まることで電流が発生し、外部の回路に電気として取り出せる仕組みです。各層が電子とホールの流れを一方向に整理しているため、無駄なく電気へ変換できます。

弱い光でも発電できる理由

ペロブスカイト太陽電池は光を吸収する力が強く、少ない光でも効率的に電子とホールを生み出せます。従来のシリコン太陽電池が発電に10万ルクス前後の明るさを必要とするのに対し、ペロブスカイト太陽電池は200から1,000ルクス程度の低照度でも発電が可能です。

そのため、曇りの日や日陰、室内の照明下といった、シリコン太陽電池では発電効率が大きく落ちる環境でも実用的な発電が期待できます。オフィスや工場内の設置場所を広げられる点は、この特性ならではの強みです。

薄くて軽い理由

ペロブスカイト層は液状の材料をフィルムや基板に塗布・印刷する方法で作れるため、厚みのある結晶を育てる工程が不要です。層の厚さは1マイクロメートル前後と、シリコン太陽電池の発電層に比べてはるかに薄くできます。

基板にフィルムを使えば、太陽電池全体を折り曲げられるほど薄く軽く仕上げられます。この薄さと軽さが、建物の壁面や車体の曲面など、これまで太陽光パネルを設置しにくかった場所への展開を後押ししています。

ペロブスカイト太陽電池が生まれた背景

ペロブスカイト太陽電池は、日本人研究者によって世界で初めて実用可能な形で発表された技術です。独創的なペロブスカイト太陽電池の仕組みが誕生した経緯を知ると、日本発の次世代技術として期待される理由がより深く理解できます。

発明者は日本人の宮坂力氏

ペロブスカイト太陽電池を発明したのは、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授です。宮坂氏はもともと色素増感太陽電池という別の太陽電池を研究しており、そこにペロブスカイトという材料を組み合わせたことが発明のきっかけになりました。

化学分野を専門とする宮坂氏の視点から、新しい材料を太陽電池に応用する発想が生まれた点が、この技術の出発点です。

桐蔭横浜大学から世界へ広がった研究

宮坂研究室では、他大学から加わった大学院生とともに研究を重ね、2009年に世界で初めてペロブスカイト太陽電池に関する論文を発表しました。発表当初の変換効率は3.8パーセントにとどまっていましたが、この研究が世界中の研究者の注目を集めるきっかけになります。

2012年には海外の研究グループが10パーセントを超える変換効率を達成し、これを機にペロブスカイト太陽電池の研究は世界的なブームへと発展しました。桐蔭横浜大学という一研究室から始まった技術が、世界規模の開発競争にまで広がった点は、この分野の大きな特徴です。

日本発技術として期待される理由

ペロブスカイト太陽電池は基礎研究の発端が日本にあることから、日本国内では特に強い期待が寄せられています。国内企業による実用化の動きが進んでいるのも、こうした技術的な優位性を背景にしています。

研究の原点が国内にあることは、特許や技術ノウハウの面でも日本企業に一定の強みをもたらすと考えられています。技術の生まれた背景を理解しておくことは、今後の実用化の展開を追ううえでも役立ちます。

シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池の違い

シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池は、どちらも光を電気に変える太陽電池ですが、材料・製造方法・設置できる場所や、ペロブスカイト太陽電池の発電効率の伸びしろに違いがあります。両者の特徴を比較すると、それぞれの技術の役割が見えてきます。

変換効率を比較する

シリコン太陽電池の変換効率はおよそ27パーセントで、長年の改良によって高い水準に達しています。従来の太陽光発電の仕組みで主流だったシリコン系に対し、ペロブスカイト太陽電池の変換効率もおよそ25から26パーセントまで伸びており、シリコン系に迫る性能です。

さらに、ペロブスカイト層とシリコン層を重ねるタンデム型という手法を使うと、変換効率は30パーセント近くまで高められます。単独の性能では追いつく段階にあるものの、組み合わせ次第でシリコン系を上回る可能性を持つ点が注目されています。

項目シリコン太陽電池ペロブスカイト太陽電池
変換効率の目安約27%約25〜26%(タンデム型は約30%)
製造方法高温での結晶成長塗布・印刷
主な形状硬く重い薄く軽く柔軟

製造方法とコストの違い

シリコン太陽電池は、高純度のシリコン結晶を高温で育てる工程が必要で、設備投資や消費エネルギーが大きくなりやすい製造方法です。一方でペロブスカイト太陽電池は、材料を溶かした液体をフィルムや基板に塗布・印刷する方法で作れます。

量産化が進めば、ペロブスカイト太陽電池の製造コストはシリコン太陽電池のおよそ3分の1から5分の1程度に抑えられると見込まれています。レアメタルを使わない点も、材料調達の面でのコスト面や資源リスクの低減につながります。

設置できる場所と用途の広がり

シリコン太陽電池は硬く重いため、広い屋根や土地など、重量に耐えられる場所への設置が中心です。ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽く柔軟性があるため、これまで設置が難しかった建物の壁面や曲面のある屋根にも展開できます。

用途の広がりという点では、ペロブスカイト太陽電池のほうが選択肢は豊富です。今後はシリコン太陽電池の設置が難しかった場所を補完する形で、両者が使い分けられていくと考えられます。

ペロブスカイト太陽電池のメリット

ペロブスカイト太陽電池には、シリコン太陽電池にはない複数のメリットがあります。従来の太陽光発電のメリットと比較しながら、変換効率・軽さと柔軟性・製造コスト・原料調達という4つの観点から見ていきます。

高い変換効率を実現できる

ペロブスカイト太陽電池は、単接合型で26パーセントを超える変換効率が報告されており、世界最高水準に達しています。2009年に発表された当初の変換効率は3から4パーセント程度でしたが、10年余りで大きく向上しました。

シリコン層と組み合わせるタンデム型では、変換効率が30パーセントを超える例も出ています。技術の伸びしろが大きく、今後さらなる効率向上が期待できる点は大きな魅力です。

軽量で柔軟性が高い

ペロブスカイト層はフィルムに塗布や印刷する方法で作れるため、非常に薄く軽い太陽電池に仕上げられます。曲げられるほどの柔軟性を持つため、これまで太陽光パネルを設置できなかった曲面や壁面にも取り付けられます。

建物の外壁や車の屋根、ウェアラブル機器のような小型製品まで、設置場所の選択肢が広がる点はシリコン太陽電池には無い強みです。

低コストで製造できる

ペロブスカイト太陽電池は、高温での結晶成長が不要で、塗布や印刷といった比較的シンプルな工程で製造できます。量産化が進めば、製造コストはシリコン太陽電池のおよそ3分の1から5分の1に抑えられると見込まれています。

製造工程が少ないことは、設備投資やエネルギー消費の削減にもつながります。コスト面での優位性は、今後の普及スピードを左右する重要な要素です。

原料を国内で調達できる

ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ素は、日本が世界有数の産出量を誇る資源です。シリコン太陽電池の材料調達が海外に依存しがちなのに対し、ペロブスカイト太陽電池は原料を国内で確保しやすいという利点があります。

原料を国内調達できれば、資源価格の変動や供給の不安定さといったリスクを抑えられます。エネルギー安全保障の観点からも、この特性は日本にとって重要な意味を持ちます。

ペロブスカイト太陽電池の実用化状況

ペロブスカイト太陽電池は、2026年に入り研究段階から事業化の段階へと着実に進んでいます。国内企業による製品化や、政府の後押しが実用化を加速させています。

積水化学によるフィルム型の事業化

積水化学工業は2026年3月、フィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」の事業を正式に開始しました。国内メーカーによるペロブスカイト太陽電池の発売は、これが初めての事例です。

SOLAFILは幅1メートル、長さ1.5メートルのサイズで、発電効率はおよそ15パーセント、耐久性は10年程度とされています。軽量で薄く曲げられる特性を生かし、耐荷重の低い工場や学校の屋根への設置が想定されています。2026年度は自治体や高速道路会社など、限定的な導入先から供給が始まる計画です。

政府が示す実用化ロードマップ

経済産業省は2024年11月に公表した次世代型太陽電池戦略で、ペロブスカイト太陽電池を2040年までに20ギガワットの規模まで普及させる目標を掲げています。2030年を待たずにギガワット級の量産体制を構築する方針も示されており、国を挙げた実用化の後押しが進んでいます。

環境省も政府部門への率先導入を進めており、公共施設への設置事例を増やすことで、民間への普及を後押しする狙いがあります。

国内企業に広がる技術開発

積水化学に続き、パナソニックはガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池で実証実験を進め、事業化の時期を前倒ししています。カネカや東芝もタンデム型で30パーセントを超える変換効率を発表するなど、各社が独自の強みを生かした開発を進めている状況です。

複数の企業が異なる方式で開発を競い合うことで、用途や設置場所に応じた製品の選択肢が今後さらに増えていくと見込まれます。

ペロブスカイト太陽電池の将来性

ペロブスカイト太陽電池は、政府の導入目標や活用分野の広がりを見ると、今後のエネルギー政策における重要な役割を担う技術といえます。一方で、普及に向けて解決すべき課題も残っています。

20ギガワット目標が持つ意味

政府が掲げる2040年20ギガワットという目標は、原子力発電所にしておよそ20基分に相当する規模です。この数字からも、ペロブスカイト太陽電池が一部の実証事業にとどまらず、日本のエネルギー政策の中核を担う技術として位置づけられていることがわかります。

目標達成には、企業各社の量産体制の構築に加え、品質や耐久性を安定させる技術の底上げが欠かせません。政府の目標は、企業がこの技術に投資する際の後押し材料としても機能しています。

広がりが期待される活用分野

ペロブスカイト太陽電池の軽さと柔軟性は、これまで太陽光発電が難しかった場所への展開を可能にします。屋根の強度が低い古い工場やスレート屋根、ビルの壁面や窓ガラスなどが代表的な活用先です。

自動車の屋根やボンネットに搭載し、走行中や駐車中に充電するソーラーカーとしての応用も研究が進んでいます。都市部の建物やインフラを活用した分散型エネルギー源として広がれば、脱炭素社会の実現に向けた貢献度も高まっていきます。

普及に向けて残る課題

ペロブスカイト太陽電池には鉛などの物質が含まれており、廃棄やリサイクルの仕組みを整えることが普及の前提条件になります。複数の層で構成される構造上、素材ごとに分離して回収する必要があり、リサイクルの手順は簡単ではありません。

実際の屋外環境で長期間にわたり性能を維持できるかという耐久性の検証も、実用化を広げるうえで欠かせない要素です。製造から廃棄までを見据えた制度やルールづくりが、今後の普及スピードを左右すると考えられます。

まとめ:ペロブスカイト太陽電池は次世代エネルギーの現実解になる

ペロブスカイト太陽電池は、日本人研究者の発明から生まれた次世代の太陽電池で、薄さや軽さ、低コストといった特徴を持ち、シリコン太陽電池では難しかった場所への設置を可能にします。2026年には積水化学によるフィルム型製品の事業化が始まり、研究段階から実用化の段階へと着実に歩みを進めています。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • ペロブスカイト太陽電池は薄く軽い次世代太陽電池
  • 変換効率や製造コストでシリコン系に迫る性能を持つ
  • 2026年に事業化が始まり2040年20GWの普及目標を掲げる

本記事を読むことで、ペロブスカイト太陽電池の基礎知識から実用化の現状までを理解でき、自社での活用可能性を検討する材料が得られたのではないでしょうか。

ペロブスカイト太陽電池の導入や活用について具体的に検討したい方は、お気軽にお問い合わせください。詳しい資料もご用意しています。

ペロブスカイト太陽電池に関するよくある質問

参考文献

  1. フィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」事業開始のお知らせ|積水化学工業株式会社
  2. 次世代型太陽電池戦略|経済産業省 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会
  3. 桐蔭横浜大学 宮坂研究室

執筆者

Green With 編集部
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編集部

Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。

監修者

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