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潮力発電とは?仕組みとメリット・デメリットを日本事例で解説

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この記事のポイント

潮力発電は潮の満ち引きや流れを利用する再生可能エネルギーで、天候に左右されず発電量を予測しやすい。コストや設置場所の制約が課題だが、長崎県五島市では2030年度の商用化を目指す実証が進んでいる。

潮力発電とは?仕組みとメリット・デメリットを日本事例で解説

「潮力発電という言葉は聞くけれど、潮流発電や潮汐発電、波力発電との違いがよく分からず、自社の脱炭素の取り組みに活用できるのかも判断がつかない」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 潮力発電の仕組みと種類
  • 潮力発電のメリットとデメリット
  • 日本と世界の導入事例

潮力発電は、潮の満ち引きや潮の流れが持つエネルギーを電気に変える発電方法で、天候に左右されにくく発電量を予測しやすいという特徴を持っています。

本記事を読めば、潮力発電と類似する発電方式との違いから、メリット・デメリット、日本や海外の導入事例までを整理して理解でき、自社の脱炭素戦略における位置づけも見えてくるはずです。ぜひ最後まで読み進めてください。

潮力発電の仕組みと種類

潮力発電は、潮の満ち引きや潮の流れが持つエネルギーを利用して電気を生み出す発電方式です。海に囲まれた日本では、新たな再生可能エネルギーの種類として注目されています。潮力発電という言葉は、性質の異なる複数の発電方式をまとめて指す場合が多く、まずは原理と種類を正しく理解することが欠かせません。

潮の満ち引きを利用する発電の原理

潮力発電の基本原理は、潮の満ち引きによって生まれる水の動きでタービンを回し、その回転運動を発電機に伝えて電気に変換するというものです。海底や海峡にタービンを設置し、潮の流れが持つ運動エネルギーを直接電気エネルギーへ変換する仕組みになっています。

風力発電や太陽光発電は天候によって発電量が左右されますが、潮の満ち引きは月と地球の動きによって起こる自然現象であるため、1日の発電量をあらかじめ予測しやすいという特徴があります。この予測のしやすさは、電力の需給を管理するうえで大きな強みになります。

潮流発電や潮汐発電との違い

潮力発電は、大きく「潮流発電」と「潮汐発電」の2つの方式に分けられます。両者は同じ潮の力を利用しますが、エネルギーの取り出し方が異なります。

方式エネルギーの利用方法主な設備
潮汐発電満潮と干潮の水位差(位置エネルギー)湾や河口に建設する水門・ダム
潮流発電潮の流れそのものの運動エネルギー海峡や内湾に設置するタービン

潮汐発電は満潮時に海水をせき止めて貯め、干潮時に水門を開いて放出する際にタービンを回す方式で、原理としては水力発電に近いといえます。一方の潮流発電は、ダムや水門を新たに建設する必要がなく、潮の流れが生じる海域にタービンを設置するだけで発電できるため、比較的設置の自由度が高い方式です。長崎県五島市の実証事業など、日本国内で進む取り組みの多くはこの潮流発電にあたります。

波力発電との違い

潮力発電と混同されやすい発電方式に、波力発電があります。波力発電は波の上下運動を利用して発電するのに対し、潮力発電は潮の満ち引きや水平方向の流れを利用する点が異なります。

波の高さや頻度は気象条件によって変わりやすく、発電量が変動しやすいのが波力発電の特徴です。これに対して潮力発電は、月の引力という規則的な自然現象を土台にしているため、発電量の変動が比較的小さく安定しています。この違いを理解しておくと、それぞれの発電方式が持つ強みと弱みを見極めやすくなります。

潮力発電のメリット

潮力発電には、太陽光発電や風力発電にはない独自の強みがあります。安定した発電量が見込めるだけでなく、環境負荷の低さや地域への経済効果も期待できる発電方式です。ここでは代表的な4つのメリットを整理します。

天候に左右されにくい安定性

潮力発電の最大の強みは、天候の影響をほとんど受けずに発電できる点です。太陽光発電は日照の有無、風力発電は風の強さに発電量が左右されますが、潮の満ち引きは地球と月の動きによって起こる規則的な自然現象であるため、発電設備を安定してコントロールできます。

天候不順が続く時期でも一定の発電量を確保しやすく、電力の安定供給に貢献できる点は、他の再生可能エネルギーと比較しても際立った長所です。

発電量を予測しやすい

潮の満ち引きは地球や月の動きから計算できるため、潮力発電はどの時期にどれだけ発電できるかを高い精度で見込めます。この予測のしやすさは、電力会社にとって需給計画を立てやすいという実務的な利点につながります。

天候に左右される他の再生可能エネルギーは発電量の変動を読みにくいのが課題ですが、潮力発電は長期的な発電計画を組みやすく、電力供給の信頼性を高める要素になります。

環境への負荷が少ない

潮力発電は自然の潮の力でタービンを回すため、発電時に二酸化炭素を排出しません。設備の製造や設置にかかるエネルギーを含めて考えても、火力発電と比べて生涯を通じた排出量を大きく抑えられるとされています。

化石燃料を使用せず廃棄物も発生しにくいことから、脱炭素社会の実現に向けた選択肢として位置づけられています。二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減を目指す企業にとっても、注目度の高いエネルギー源であり、その導入価値は一般的な再生可能エネルギーの特徴や仕組みをふまえた上で評価されるべきです。

地域経済への貢献

潮力発電の設備は建設からメンテナンスまで多くの工程を必要とするため、地元の作業員や技術者の雇用を生み出します。日本には海峡や瀬戸内海など潮力発電に適した沿岸域が多く、導入が進めば地域経済の活性化につながる可能性があります。

長崎県五島市のように、実証事業を通じて新たな産業や技術の集積が期待される地域もあり、潮力発電は単なる発電手段にとどまらず、地域の雇用創出やイノベーション促進の観点からも価値のある取り組みといえます。これは、持続可能な再生可能エネルギーの発電方法がもたらす波及効果の好例です。

潮力発電のデメリットと課題

潮力発電には安定性という強みがある一方で、普及を妨げるいくつかの課題も存在します。導入を検討するうえでは、潮力発電のメリット・デメリットを正しく把握しておく必要があります。

建設と維持にかかるコストの高さ

潮力発電は海中に特殊な設備を設置するため、建設段階から高い費用がかかります。潮流発電の発電コストはおよそ23〜32円/kWhとされ、石炭火力の13円台や家庭用太陽光の17円台と比べても割高な水準です。

海中設備は定期点検や修繕の際にも特別な作業船や技術者が必要になるため、稼働後の維持管理費が重くのしかかります。このコストの高さが、再生可能エネルギーのコスト比較においても海洋開発の大きな障壁として認識されています。

設置場所が限られる制約

潮力発電は、どこにでも設置できるわけではありません。十分な潮の流れや潮位差が得られる海域であることが前提条件になるため、適地そのものが限られます。

さらに、漁業権や船舶の航路といった既存の利害関係とも調整が必要になるため、条件を満たす海域が見つかっても、実際に設置できるとは限りません。こうした制約の多さが、他の再生可能エネルギーと比べて導入拡大のスピードを鈍らせています。

海洋生態系への影響への配慮

海中にタービンや関連設備を設置することは、周辺の海洋生物や生態系に影響を与える可能性があります。魚介類の生息環境の変化や、タービンと生物の接触といったリスクを完全には避けられません。

そのため、設置前には環境アセスメントやモニタリングを丁寧に実施し、生物多様性への配慮を継続的に行うことが求められます。この手間とコストも、事業者にとっては無視できない負担ですが、国内の長期的な再生可能エネルギー発電量の推移において海洋エネルギーのシェアを高めるためには避けて通れません。

設備の耐久性という課題

海中の設備は、海水の塩分や貝類の付着などによって劣化が進みやすい環境に置かれています。耐用年数はおよそ5年から10年程度とされ、陸上の発電設備と比べて短い傾向があります。

故障が起きた場合の修繕作業も海中で行う必要があるため、対応の難易度とコストがともに高くなりがちです。設備の長寿命化と保守の効率化は、潮力発電が今後普及していくうえで避けて通れない技術的な課題であり、この耐候性の確保はバイオマス発電の仕組みやメリットなど陸上再エネ技術と比較しても独自の難しさを持っています。

潮力発電における日本の導入事例

日本は海に囲まれた国土を持ち、潮力発電のポテンシャルが世界トップクラスと評価されています。ここでは潮力発電の仕組みに関する国内の具体的な取り組みと、代表的な事例、政策の動きを見ていきます。

長崎県五島列島の実証実験

日本国内で潮力発電の実証が最も進んでいるのが、長崎県五島市周辺の海域です。久賀島沖は海洋再生可能エネルギー実証フィールドに選定され、環境省の事業を通じて潮流発電技術の検証が続けられてきました。

九州電力グループと四国電力は、五島列島の久賀島と奈留島の間にある奈留瀬戸で共同の実証事業を進めており、2026年10月には出力1,100キロワットの潮流発電機を設置する計画です。2026年度から2028年度にかけて長期の安定運転を検証し、2030年度には国内初となる商用化を目指すとされています。この規模の発電機が稼働すれば、1日あたり数百世帯分に相当する電力量をまかなえる見込みです。

国による政策と支援体制

潮力発電の実用化には、国の政策的な後押しが欠かせません。環境省は「潮流発電技術実用化推進事業」を通じて、長崎県五島市沖の実証事業を継続的に支援してきました。潮流発電は年間を通じて出力の変動が小さく、環境への影響も比較的少ない発電方式であると位置づけられています。

NEDOと経済産業省資源エネルギー庁も、非化石エネルギーへの転換を進める技術戦略の中で、潮力発電を含む海洋エネルギーの研究開発を後押ししています。こうした複数の機関による支援が、実証から商用化への橋渡し役を担っています。

実用化に向けて残る課題

商用化の目標時期が示された一方で、実用化にはまだ解決すべき課題が残っています。国内で発電機を安定的に供給できる体制づくりや、海中設備のメンテナンス費用を抑える仕組みの整備が特に重要とされています。

こうした課題を克服できるかどうかが、2030年度の商用化目標を達成できるかを左右する分かれ目になります。今後の実証結果の積み重ねが、日本における潮力発電の普及ペースを決めていくといえます。

潮力発電における世界の導入事例

潮力発電は、海外ではすでに商用規模で稼働している事例が複数あります。日本の今後の展望を考えるうえでも、世界各国の取り組みは参考になる情報が豊富です。

イギリスの潮力発電所

イギリスは、スコットランド北部のペントランド海峡で「MeyGen」と呼ばれる世界最大級の潮流発電プロジェクトを進めています。海底に設置した水平軸型タービン4基によって出力6メガワットの発電を実現し、2017年の稼働開始以来、商用規模の潮流発電としては世界で最も長い実績を持つ設備です。

今後はフェーズ2として28メガワット規模への拡張が計画されており、政府の支援制度を活用しながら段階的な発電容量の拡大を目指しています。国を挙げて海洋エネルギーの開発を後押しする姿勢が、イギリスの潮力発電を世界的な先進事例に押し上げています。

フランスのランス潮力発電所

フランスのランス潮力発電所は1966年に完成した、世界初の大規模な潮力発電施設です。最大出力は24万キロワットにのぼり、年間の発電量はおよそ6億キロワットアワーとされています。稼働開始から半世紀以上が経過した現在も商用運転を続けており、潮力発電の長期的な信頼性を示す代表的な事例です。

満潮と干潮の水位差を利用する潮汐発電の方式を採用しており、大規模なダムを建設することで安定した発電量を確保している点が特徴です。

韓国とカナダの事例

韓国では、西海岸に位置する始華湖に潮汐発電所が建設され、2011年から発電を開始しています。10基のタービンを合わせた発電容量は254メガワットに達し、フランスのランス潮力発電所を上回る規模の設備として知られています。

カナダでは、世界最大級の干満差で知られるファンディ湾で潮流発電事業が進められており、日本企業も参画する形でプロジェクトが動いています。2023年には最初の発電機が運転を開始しており、干満差の大きい海域を持つカナダならではの取り組みとして注目されています。

まとめ:潮力発電は安定性と低い環境負荷が魅力だが、コストと設置場所の制約が普及の鍵

本記事では、潮力発電の仕組みと種類から、メリット・デメリット、日本と世界における導入事例までを紹介してきました。

続いて、この記事のポイントを3つの箇条書きで振り返ります。

本記事のポイント

  • 潮力発電は潮の満ち引きや流れを利用し、天候に左右されず発電量を予測しやすい
  • コストの高さや設置場所の制約、海洋生態系への配慮が普及の課題になっている
  • 長崎県五島市では2030年度の商用化を目指す実証が進み、海外でも商用規模の稼働事例がある

ここまでの内容から、潮力発電がどのような発電方式で、どこに強みと課題があるのかを具体的に把握できたはずです。日本や世界の導入事例を踏まえることで、自社の脱炭素戦略やGX推進における再生可能エネルギーの選択肢として、潮力発電を冷静に検討できるようになります。

潮力発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入や脱炭素の取り組みについて相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。

潮力発電に関するよくある質問

参考文献

  1. 潮流発電について(環境省)
  2. 潮汐力発電|海洋エネルギーとは(佐賀大学 海洋エネルギー研究所)

執筆者

Green With 編集部
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編集部

Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。

監修者

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Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。

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