グリーントランスフォーメーション事例を業界別と規模別に紹介
この記事のポイント
グリーントランスフォーメーションの事例は鉄鋼や化学など業界ごとに技術が異なり、トヨタやNTT、ENEOSなど大手から中小企業まで広がっている。中小企業は自社の排出量把握と補助金活用から始められる。
「グリーントランスフォーメーションの事例を知りたい。自社でも取り組むべきか判断したいが、何から始めればいいのか分からない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
本記事の内容
- 業界別に見るグリーントランスフォーメーションの取り組み
- 国内大手企業と中小企業の具体的な事例
- 補助金を活用した自社での進め方
グリーントランスフォーメーションの事例は、鉄鋼や化学といった業界から中小企業まで幅広く広がっています。本記事を読めば、代表的な取り組みと自社に合った始め方が見えてきますので、ぜひ最後までご覧ください。
グリーントランスフォーメーション(GX)とは
グリーントランスフォーメーションとは、化石エネルギー中心の経済や産業の構造を、太陽光や風力などのクリーンエネルギー中心へ転換する取り組みです。そもそも国策として語られるgxとは何か、またその中で企業が実践すべき脱炭素経営とはどうあるべきか。具体的な事例を理解する前に、まずGXの意味や背景、政府の動きを押さえておくと、各企業の狙いが読み取りやすくなります。
GXの意味と目的
GXはグリーントランスフォーメーションの略称で、温室効果ガスの排出削減とエネルギーの安定供給、経済成長の3つを同時に実現しようとする概念です。単に二酸化炭素を減らすだけの活動ではありません。脱炭素分野で新しい需要や市場を生み出し、日本の産業競争力を高める点に本質があります。
経済産業省はGXの目的を、エネルギーの安定供給を確保しながら新たな成長の機会をつくることと位置づけています。企業にとってのGXは、環境対応とビジネス成長を両立させる経営戦略そのものです。例えば住宅業界では、長期優良住宅とgxのどっちが得かといった消費者の経済的メリットへの問いかけに答える形で、省エネ性能の高さが新しい競争軸となっています。
カーボンニュートラルや脱炭素との違い
GXと混同されやすい言葉に、カーボンニュートラルや脱炭素があります。それぞれの意味を整理すると、GXが目指す方向性が見えてきます。また、これらの目標達成に向けた具体的な規制枠組みであるgx etsがいつから開始され義務化されるのかという動向も、企業が変革のスケジュールを立てる上で無視できません。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 脱炭素 | 二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出をなくすこと |
| カーボンニュートラル | 排出量と吸収量を差し引きゼロにした状態 |
| GX | 脱炭素を実現しながら経済社会システム全体を変革する取り組み |
脱炭素やカーボンニュートラルが到達すべき状態を示すのに対し、GXはその状態へ向かう変革のプロセス全体を指します。産業構造の転換や新産業の創出まで含む点が、GXの広さです。
GXが注目される背景
GXが注目される背景には、地球温暖化の深刻化と国際的な脱炭素の流れがあります。異常気象による被害が各地で増え、温室効果ガスの削減は待ったなしの課題です。EUをはじめ各国が規制を強め、脱炭素に対応できない企業は取引の機会を失うリスクを抱えています。
投資の面でも変化が進んでいます。環境や社会への配慮を重視するESG投資が世界的に拡大し、GXへの姿勢が企業評価を左右するようになりました。こうした状況が、gx企業としての取り組みをアピールし、先行事例を構築する動機づけとなっています。
政府によるGX推進の取り組み
日本政府はGXを重点分野に位置づけ、制度と資金の両面から後押ししています。その中核的な青写真となるgx基本方針のもと、10年間で150兆円を超える官民投資を目指す方針を掲げました。2025年2月には長期指針となるGX2040ビジョンを閣議決定し、脱炭素と経済成長を両立させる道筋を示しています。
資金面では、GX経済移行債を発行し、10年間で20兆円規模の先行投資支援を行う計画です。企業の自主的な排出削減を促すGXリーグも動いており、2026年度からは排出量取引制度が本格稼働します。
- GX推進法にもとづく150兆円超の官民投資
- GX経済移行債による20兆円規模の先行投資支援
- GXリーグと2026年度からの排出量取引の本格稼働
政策が整うことで、企業がGXに踏み出す環境は年々整いつつあります。
業界別に見るグリーントランスフォーメーションの取り組み事例
グリーントランスフォーメーションの進め方は、業界ごとに大きく異なります。排出量が多く脱炭素が難しい産業ほど、技術革新を軸にしたGX事例が生まれています。ここでは代表的な4つの業界の取り組みを見ていきます。
鉄鋼業界の事例
鉄鋼業界は製造時に大量の二酸化炭素を排出するため、水素を使った製鉄技術の開発に力を入れています。代表的な取り組みが、高炉に水素を吹き込んでCO2を減らすCOURSE50です。石炭の代わりに水素で鉄鉱石を還元することで、排出量の大幅な削減を狙います。
日本製鉄はこの技術を発展させ、試験高炉での実証を進めています。高温水素を直接吹き込む実験では、CO2排出量を43パーセント削減する成果を確認しました。将来的には水素だけで鉄をつくる水素直接還元の実用化を目標に掲げています。
化学業界の事例
化学業界のGXは、二酸化炭素や廃プラスチックを原料に活用するケミカルリサイクルが中心です。使い終わったプラスチックを化学的に分解し、再び原料に戻すことで、資源の循環と排出削減を同時に実現します。
石油からつくる化学品を、CO2由来の原料へ切り替える研究も進んでいます。ナフサ分解の工程で排出量を抑える取り組みや、製造に使う電力を脱炭素電源へ転換する動きも広がりつつあります。
石油業界の事例
石油業界は、燃料そのものを脱炭素化する方向へ舵を切っています。注目されているのが、水素と二酸化炭素を合成してつくる燃料e-fuelです。既存のエンジンや給油設備をそのまま使えるため、実用化への期待が高まっています。
植物などを原料にする次世代バイオ燃料の開発や導入も進んでいます。燃費を高める燃料の改良と合わせ、脱炭素と安定供給の両立を目指す取り組みが特徴です。
電機・電子業界の事例
電機・電子業界では、省エネ製品の開発と自社工場の脱炭素化が両輪になっています。消費電力を大きく減らす省エネ半導体や、光で信号を伝える光電融合の技術は、社会全体のエネルギー削減に貢献する分野として国の支援対象にもなっています。
再生可能エネルギーの拡大を支える製品づくりも進んでいます。軽くて曲げられる次世代太陽電池ペロブスカイトの開発など、GXの土台となる技術を生み出す役割を担っています。
国内大手企業のグリーントランスフォーメーション事例
グリーントランスフォーメーションを牽引しているのが、豊富な資源を持つ大手企業です。自社の脱炭素だけでなく、業界全体や社会の変革を見据えた取り組みが目立ちます。ここでは代表的な4社の事例を紹介します。
トヨタ自動車の取り組み
トヨタ自動車は、車をつくる工程そのものを脱炭素化するグリーンファクトリーを掲げています。世界の自社工場の二酸化炭素排出を、2035年に実質ゼロにする目標です。
具体策は3つの柱で構成されています。省エネ活動による日常のカイゼン、生産技術の革新、そして再生可能エネルギーと水素の活用です。太陽光や風力で工場の電力をまかない、太陽光からつくった水素を製造工程の燃料に使うなど、独自の脱炭素モデルを築いています。
NTTグループの取り組み
NTTグループは、環境ビジョンとしてNTT Green Innovation toward 2040を策定し、2040年のカーボンニュートラル実現を目指しています。政府目標より10年早い前倒しの計画です。
実現に向けた方策は2つです。1つは再生可能エネルギー利用の拡大、もう1つが次世代通信基盤IOWNの導入による電力削減です。膨大な電力を使う通信インフラを、光技術で省エネ化する発想がNTTならではのGX事例といえます。
ENEOSホールディングスの取り組み
ENEOSホールディングスは、石油を主力としてきた企業として、2050年度のカーボンニュートラル実現を目標に掲げています。2040年度までに温室効果ガスを2013年度比で73パーセント削減する中間目標も設定しました。
技術開発の柱は、水素を運びやすくする水素キャリア製造や、二酸化炭素と水素からつくる合成燃料、植物由来のバイオ燃料です。既存のエネルギー供給網を生かしながら、脱炭素社会を支える供給者へ転換しようとしています。
パナソニックホールディングスの取り組み
パナソニックホールディングスは、環境行動GREEN IMPACTを軸にGXを推進しています。2030年までに全事業会社の二酸化炭素排出を実質ゼロにする方針です。
さらに2050年には、自社の削減だけでなく省エネ製品の提供などを通じ、世界全体の排出量の約1パーセントにあたる3億トンの削減に貢献する目標を掲げています。製品と事業の両面から社会の脱炭素を後押しする姿勢が特徴です。
中小企業のグリーントランスフォーメーション事例と進め方
グリーントランスフォーメーションは大企業だけのものではありません。身近な設備投資から始められるGX事例が、中小企業にも広がっています。ここでは具体的な取り組みと、自社で進めるためのポイントを見ていきます。
製造業における事例
製造業の中小企業では、工場の屋根に太陽光発電を設置する取り組みが増えています。ある企業では複数の工場に太陽光パネルを導入し、工場で使う電力の約15パーセントを自家発電でまかなっています。
部署をまたいだ省エネ活動によって、電力使用量を15パーセント削減した例もあります。地域資源を生かした電動モビリティの開発など、自社の強みを脱炭素につなげる動きも見られます。設備投資と現場のカイゼンを組み合わせる点が、中小製造業のGXの特徴です。
建設業における事例
建設業では、自社ビルを省エネ化するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への取り組みが進んでいます。断熱性能を高めた建物に太陽光発電や地中熱利用を組み合わせ、エネルギー消費を実質ゼロに近づける手法です。
工事現場での脱炭素も課題です。建設機械の軽油や電力が主な排出源になるため、使用量を減らす、効率を高める、低炭素な燃料へ切り替えるという3つの視点で対策を進めています。自社施設と施工現場の両面から取り組む点が重要です。
企業が取り組むメリット
中小企業がGXに取り組むメリットは、環境貢献にとどまりません。省エネ設備や再生可能エネルギーの導入は、電気代や燃料代の削減に直結し、利益率の改善につながります。
企業価値の向上も見逃せない効果です。脱炭素に取り組む姿勢は取引先や投資家からの評価を高め、優秀な人材を引きつける力にもなります。
- 電気代や燃料代の削減によるコスト改善
- 取引先や投資家からの評価向上
- 脱炭素に前向きな人材の確保
環境対策をコストではなく投資と捉える発想が、これからのGX経営の鍵になります。
補助金を活用した進め方
中小企業がGXを始める際は、国の補助金を活用すると負担を抑えられます。省エネ設備や非化石エネルギーへの転換を対象とした補助金では、2026年度からGXに取り組むメーカーの設備を支援する枠が新設され、補助上限が引き上げられました。
まず取り組みたいのが、自社の温室効果ガス排出量の把握です。現状を数値でつかむことで、どこから手をつけるべきかが見えてきます。省エネ診断や専門家の支援制度も整っているため、いきなり大規模投資を目指さず、小さく始めて成果を長期で見ていく姿勢が現実的です。
| 進め方の段階 | 主な取り組み |
|---|---|
| 現状把握 | 温室効果ガス排出量の測定と省エネ診断 |
| 計画づくり | 補助金の情報収集と優先順位づけ |
| 実行 | 省エネ設備や再生可能エネルギーの導入 |
補助金と光熱費削減を組み合わせれば、投資を回収しながら脱炭素を進められます。
まとめ:グリーントランスフォーメーションの事例に学ぶ自社の脱炭素の第一歩
ここまで、グリーントランスフォーメーションの意味や背景から、業界別の取り組み、国内大手企業と中小企業の事例、そして補助金を活用した進め方までを解説してきました。GXは環境対応と経済成長を両立させる経営戦略として、企業規模を問わず広がっています。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- GXは脱炭素を通じて経済成長を目指す社会全体の変革
- 鉄鋼や化学など業界ごとに異なる技術で事例が生まれている
- 中小企業は排出量の把握と補助金活用から始められる
グリーントランスフォーメーションの事例を知ることで、自社がどの分野でどのように関われるのか、判断材料が整理できたのではないでしょうか。まずは自社の排出量を把握し、活用できる制度を調べるところから、脱炭素の第一歩を踏み出せます。
脱炭素経営やGXの進め方について具体的に検討したい場合は、専門家への相談から始めてみてください。
グリーントランスフォーメーション 事例に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
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