CCUSと二酸化炭素回収の仕組み・課題を徹底解説【2026年】
この記事のポイント
CCUSは二酸化炭素を回収し、燃料や化学品として利用する、または地中に貯留する技術です。CCS・CCUとの違い、分離回収から貯留までの仕組み、コストや法整備の課題、日本と海外における導入事例を体系的に整理して解説します。
「CCUSという言葉を目にしたけれど、二酸化炭素の回収や貯留とどう関係するのか、CCSやCCUとの違いも含めて理解できていない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)の意味とCCS・CCUとの違い
- CCUSの仕組みとメリット・課題
- 日本と海外における導入事例
CCUSとは、二酸化炭素を回収したうえで資源として利用したり地中に貯留したりする技術です。
本記事を読めば、CCUSの基本的な仕組みから、コストや法整備といった導入の課題、そして日本や海外での具体的な取り組みまで、脱炭素社会に向けたCCUSの全体像がつかめます。ぜひ最後までご覧ください。
CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)とは
CCUSとは、工場や発電所から出る二酸化炭素を回収し、資源として利用したり地中に貯留したりする一連の技術です。脱炭素に向けた水素の供給網構築などと並び、脱炭素社会の実現に向けた重要な選択肢として、国内外で注目が高まっています。
CCUSの基本的な意味と読み方
CCUSは「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略称で、日本語では二酸化炭素回収・利用・貯留と呼ばれます。読み方は「シーシーユーエス」です。
排出源からCO2を分離・回収し、燃料や化学品などの資源として利用する、あるいは地中深くに閉じ込めて大気中に出さないようにする、この2つのアプローチを組み合わせた考え方がCCUSにあたります。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、多くの国がCCUSを重要な技術として位置づけています。
CCSとCCUとの違い
CCUSを理解するうえで欠かせないのが、CCSとCCUという2つの関連技術との違いです。それぞれの役割は次のように整理できます。
| 略称 | 正式名称 | 内容 |
|---|---|---|
| CCS | Carbon dioxide Capture and Storage | 回収した二酸化炭素を地中に貯留する技術 |
| CCU | Carbon dioxide Capture and Utilization | 回収した二酸化炭素を燃料や化学品として利用する技術 |
| CCUS | Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage | CCSとCCUを組み合わせ、利用と貯留の両方を行う技術 |
CCSは回収した二酸化炭素を地下深くの地層に閉じ込めることを目的としています。一方でCCUは、回収した二酸化炭素をコンクリートや合成燃料などの原料として再利用する点が特徴です。CCUSはこの両方の選択肢を持ち、状況に応じて利用と貯留を使い分けられる技術といえます。
CCUSが注目される背景
CCUSが注目される背景には、パリ協定以降の世界的な脱炭素の潮流があります。各国が温室効果ガスの排出削減目標を掲げるなか、発電や製鉄など二酸化炭素の排出を避けにくい産業でも対応できる手段として期待されています。
再生可能エネルギーの導入だけでは排出削減が難しい分野において、CCUSは既存の設備を活かしながら二酸化炭素を削減できる現実的な選択肢です。日本でもカーボンリサイクル企業による技術開発の促進を目指し、資源エネルギー庁や環境省が中心となり、CCUSに関する制度整備と実証事業を進めています。
CCUSの仕組みと技術的プロセス
CCUSは、二酸化炭素を分離・回収し、利用または貯留するという3つの工程で成り立っています。それぞれの工程で使われる技術には複数の方式があり、コストや効率の面で特徴が異なります。
二酸化炭素を分離・回収する仕組み
分離・回収は、工場や発電所の排ガスから二酸化炭素だけを取り出す最初の工程です。代表的な方式には、化学吸収法、物理吸着法、膜分離法があります。
化学吸収法は、アミンと呼ばれるアルカリ性の液体に排ガスを通して二酸化炭素を吸収させ、その後加熱して分離・回収する方式です。物理吸着法は固体の吸着材に二酸化炭素を吸着させる方式で、膜分離法は特殊な膜に排ガスを通して二酸化炭素だけを選び出す方式となっています。膜分離法は加熱の工程を必要としないため、次世代技術として期待が高まっています。現状の分離・回収コストは二酸化炭素1トンあたり4,000円から6,000円程度とされ、政府は2030年までに2,000円台への引き下げを目標としています。
回収した二酸化炭素を利用する仕組み
回収した二酸化炭素は、そのままの形で利用する方法と、化学反応によって別の物質に変換して利用する方法があります。前者はドライアイスや炭酸飲料などへの直接利用、後者は合成燃料やコンクリート製品、化学品の原料としての利用にあたります。
こうした二酸化炭素の再利用は、カーボンリサイクルとも呼ばれています。二酸化炭素を資源として循環させる仕組みは、廃棄物の削減と新たな産業の創出を同時に狙える点が強みです。
二酸化炭素を貯留する仕組み
貯留は、回収した二酸化炭素を地中深くの安定した地層に閉じ込める工程です。北海道の苫小牧では、分離・回収した二酸化炭素を海底下1,000メートルほどの地層に圧入する大規模実証試験が行われてきました。
苫小牧の実証試験では、2019年に累計30万トンの圧入という目標が達成されています。クリーンなエネルギーインフラである水素ステーションなどの展開と同様に、貯留した二酸化炭素が長期間にわたり漏れ出さないよう、地層の性質を見極めてモニタリングを続ける安定した体制が欠かせません。
CCUSのメリットと導入の課題
CCUSには二酸化炭素の削減という大きなメリットがある一方で、コストや法整備の面で解決すべき課題も残されています。導入を検討するうえでは、両面をあわせて把握しておくことが大切です。
CCUSによる二酸化炭素削減のメリット
CCUSの最大のメリットは、火力発電所や製鉄所など二酸化炭素の排出を避けにくい産業でも、大幅な排出削減が可能になる点です。既存の設備を活かしながら対応できるため、事業への影響を抑えつつ脱炭素を進められます。
回収した二酸化炭素を燃料や化学品として再利用できれば、新たな市場の創出にもつながります。二酸化炭素を廃棄物ではなく資源として扱う発想は、カーボンリサイクルという新しい産業分野を生み出す土台にもなっています。
コスト面の課題
CCUS普及の最大の障壁は、コストの高さです。分離・回収に加えて輸送や貯留にも設備投資と運用コストがかかるため、初期の水素ステーションの水素価格が高止まりする問題と同様に、事業として採算を取りにくい状況が続いています。
このコスト構造を変えるには、技術革新だけでなく、カーボンプライシングのような政策的な後押しも欠かせません。国としての引き下げ目標が達成できるかどうかは、今後の企業による導入判断を左右する重要な分かれ目になります。
貯留場所の確保と法整備の課題
二酸化炭素を安全に貯留するには、長期間漏れ出さない安定した地層を見つける必要があります。適した地層は限られており、貯留場所の選定と確保は簡単ではありません。
貯留事業を進めるには、土地所有権や鉱業権との権利関係を整理する法的枠組みも欠かせません。日本では2024年にCCS事業法が成立し、2026年には導管輸送を伴う本格的な貯留事業を可能にする制度の整備が進められています。
日本と海外におけるCCUSの取り組み事例
CCUSは日本国内だけでなく、世界各国でも制度整備と実証事業が進んでいます。地域ごとの取り組みを知ることで、CCUSの実用化がどこまで進んでいるかを把握できます。
日本国内のCCUS実証・事業事例
日本の代表的な事例が、北海道苫小牧市で行われてきた大規模実証試験です。この実証で得られた知見は、2024年に成立したCCS事業法の土台にもなっています。
同法により、2026年には導管輸送を伴う本格的な貯留事業を可能にする制度整備が進められ、事業者の選定を経て2030年の事業開始を目指す計画です。液化した二酸化炭素を船で運ぶ実証事業も進んでおり、苫小牧と舞鶴を結ぶ長距離輸送の実験が2024年から行われています。
海外におけるCCUSの取り組み
米国では、インフレ削減法によって拡充された税額控除制度である45Qが普及の後押しとなっています。二酸化炭素の貯留量1トンあたり最大85ドルの控除が受けられる仕組みで、世界の計画プロジェクトの半数近くが米国に集中しています。
欧州でもCCUSへの投資が広がっており、ドイツやデンマークでの資金提供、ノルウェーとスウェーデンによる貯留に関する法的枠組みの整備などが進められています。ノルウェーのLongshipやカナダのQuestといった先進プロジェクトは、事業として成立させるための支援制度のモデルケースとして参考にされています。
CCUSの今後の展望
CCUSは、再生可能エネルギーの導入だけでは削減が難しい産業分野において、今後さらに重要性を増していく技術です。分離・回収コストの低減と貯留場所の確保が進めば、事業として成立する範囲は着実に広がっていきます。
日本では2026年以降、CCS事業法に基づく制度整備が本格化し、事業者の選定や貯留事業の具体化が進む見通しです。国際的な連携や技術革新の動向にも注目しながら、CCUSの実用化を追っていくことが求められます。
まとめ:CCUSは二酸化炭素の課題を解決する脱炭素実現の切り札です
本記事では、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)の意味やCCS・CCUとの違い、分離回収から貯留までの仕組み、メリットと課題、そして日本と海外の取り組み事例を解説してきました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- CCUSはCO2を回収し利用と貯留の両方を行う技術である
- コストと法整備が普及に向けた大きな課題である
- 日本ではCCS事業法により2026年以降制度整備が進む
CCUSの全体像を理解できたことで、脱炭素に向けた技術の選択肢や自社の取り組みを検討するための土台が整ったはずです。コストや法規制の動向を押さえながら、CCUSが自社の事業にどう関わるかを考えるきっかけにしていただければと思います。
CCUSや脱炭素経営について詳しく相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
CCUSと二酸化炭素に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
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Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
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