風力発電の立地条件・風況や土地の選定基準をわかりやすく解説
この記事のポイント
風力発電の立地条件は年間平均風速6メートル毎秒以上の風況が目安で、50ヘクタール以上の土地、幅5メートル以上の輸送路、6万ボルト級送電線への接続が必要。住宅から100〜150メートル以上の距離、環境アセスメントも要件となる。
「所有している土地や検討中の候補地が風力発電の立地条件に合っているのか、投資や事業計画を進める前に判断基準を知りたい」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 風力発電の立地条件で重要な風況・風速の基準
- 土地・輸送路・送電線などインフラ面の条件
- 陸上風力と洋上風力で異なる立地選定のポイント
風力発電の立地条件は、風況や土地の広さだけでなく、輸送路や送電線への接続、住宅地との距離や環境アセスメントまで幅広い視点で判断する必要があります。
条件を正しく理解しておけば、候補地の適性を早い段階で見極められ、後の手戻りやコスト超過を防げますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
風力発電の立地条件で重要な風況・風速の基準
代表的な再生可能エネルギーとは何かという基礎を理解するうえでも、風力発電の立地条件で最も重要な要素は、その土地に十分な風が吹いているかという風況になります。 どれだけ広い土地や整った送電インフラがあっても、風が弱ければ発電事業として成り立ちません。
年間平均風速の目安
風力発電に適した土地の目安は、年間平均風速がおおむね6.0メートル毎秒以上あることです。この基準は、設置場所が比較的自由な太陽光発電と風力発電の比較において、風力特有の厳しい要件といえます。 地上30メートルから70メートル程度の高さでこの水準を満たす地域は、北海道や東北の沿岸部、山稜部などに集中しています。
風速が6メートル毎秒を下回る都市部や内陸の平野部は、事業採算の面で不利になりやすい傾向にあります。 候補地を選ぶ際は、まずこの平均風速の水準をクリアしているかを確認することが出発点になります。
風速が発電量に与える影響
風力発電の発電量は、風速の3乗に比例して大きくなるという特性を持っています。 つまり風速がわずか1割強まるだけでも、発電量は数割単位で増加する計算になります。
| 風速の変化 | 発電量への影響の目安 |
|---|---|
| 風速が1.1倍 | 発電量は約1.33倍 |
| 風速が1.5倍 | 発電量は約3.4倍 |
| 風速が2倍 | 発電量は約8倍 |
このため立地選定では、平均風速のわずかな差が事業性を大きく左右する点を理解しておく必要があります。 逆に風が弱すぎる時間帯には発電機が回らず、強すぎる場合はブレードを止める制御が働きます。
風況調査の方法とNEDO局所風況マップの活用
候補地の風況を把握する第一歩として活用しやすいのが、NEDOが公開している局所風況マップです。 全国を500メートル四方のメッシュに分け、地上30メートル・50メートル・70メートルの高さごとの年間平均風速を確認できます。
局所風況マップはあくまで参考値のため、実際の事業化に向けては現地での風況観測が欠かせません。 高さ約60メートルの観測タワーを設置し、最低でも1年、通常は1年半程度かけて風向きや風速の出現率を計測します。
- NEDO局所風況マップで候補地の大まかな風況を確認する
- 有望な候補地に観測タワーを設置し、実測データを収集する
- 収集したデータから年間発電量を予測し、事業性を検証する
この手順を踏むことで、机上のデータと現地の実態のずれを最小限に抑えられます。
風力発電に必要な土地・輸送・送電の条件
風況が十分な土地であっても、必要な広さの用地や設備を運び込む輸送路、電気を送り出す送電網がなければ事業化できません。これらは風力発電の基本的なインフラ要件として、開発計画の初期段階から入念に調査する必要があります。 ここでは土地・輸送・送電という3つのインフラ条件を整理します。
必要な土地面積の目安
大規模な風力発電所の場合、目安として50ヘクタール以上の用地が必要とされています。 北海道で稼働する出力1000キロワット級の施設では、実際に約100ヘクタールの土地が使われている事例もあります。
一方、出力20キロワット未満の小型風力発電であれば、必要な面積はおよそ130平方メートルまで小さくなります。
| 発電規模 | 必要な土地面積の目安 |
|---|---|
| 大規模風力発電 | 50ヘクタール以上 |
| 小型風力発電(20kW未満) | 約130平方メートル |
近隣に住宅がある場合は、これらの面積に加えて距離を確保する余地も見込んでおく必要があります。
大型部品を運ぶ輸送路の条件
風車のブレードは長さ30メートルから50メートル前後にもなる大型部品で、専用車両での輸送が必要です。 候補地までの道路には、幅5メートル以上の輸送路が確保されていることが条件になります。
港から建設現場まで山間部を通るルートでは、既存道路の拡幅や新設が必要になることも珍しくありません。 輸送計画の段階でルート上の橋やトンネルの高さ制限まで確認しておくことが重要です。
送電線への系統連系条件
発電した電気を電力網に流すには、候補地の近くに接続可能な送電線があることが欠かせません。 出力1万キロワットから3万キロワット規模の風力発電所では、6万ボルト程度の特別高圧送電線が近くにあることが目安です。
送電線までの距離が遠いほど、事業者負担で送電線や変電設備を新設するコストが膨らみます。 また電力会社が公表する系統空容量マッピングで空き容量がない地域では、出力制御や追加の系統対策工事が必要になる場合があります。
送電網への接続条件は、立地選定の初期段階で必ず確認しておくべきポイントです。
住宅地との距離や環境面で配慮すべき条件
風力発電の立地条件では、風況やインフラだけでなく、周辺住民の生活環境や自然環境への配慮も欠かせません。 騒音・景観・法手続きという3つの観点から、確認すべきポイントを見ていきます。
騒音基準と住宅からの距離
環境省は2017年、風力発電施設が発生する騒音に関する指針値を示しました。 残留騒音に5デシベルを加えた値を基準とし、下限は35デシベルまたは40デシベルとされています。
一般的な目安として、風車と住宅は100メートルから150メートル以上離すことが望ましいとされ、小型風力発電では250メートルから300メートル以上を求める自治体もあります。
| 施設規模 | 住宅との距離の目安 |
|---|---|
| 大規模風力発電 | 100〜150メートル以上 |
| 小型風力発電 | 250〜300メートル以上 |
距離の基準は自治体ごとに異なるため、候補地の所在する自治体の条例やガイドラインを個別に確認する必要があります。
景観や自然環境への配慮
風車は高さ100メートルを超える構造物になることが多く、周辺の景観に与える影響も立地選定の判断材料です。 観光地や国立公園に近い土地では、景観への配慮から設置が難しくなるケースもあります。
候補地に希少な動植物が生息していないかの事前調査も、環境面での重要な確認事項です。 渡り鳥のルートに近い場所では、バードストライクのリスクも考慮する必要があります。
環境アセスメントの手続き
出力1万キロワット以上の風力発電所は第一種事業、7500キロワットから1万キロワットは第二種事業として、環境影響評価法の対象になります。 対象事業では、方法書の審査に180日以内、準備書の審査に270日以内という期間が定められています。
環境アセスメント全体の手続きには、着工までおよそ4年程度を要するとされています。 固定価格買取制度の運転開始期限も、環境アセスメントが必要な案件は原則8年まで延長される仕組みになっています。
このように環境面の手続きは長期にわたるため、立地選定の初期段階から見込んでおくことが大切です。
陸上風力と洋上風力で異なる立地条件
風力発電の立地条件は、陸上に建てるか海上に建てるかによって大きく異なります。それぞれの開発における風力発電のメリットやデメリットを十分に考慮して選択することが重要です。 それぞれの立地選定のポイントと、着工までの一連の流れを整理します。
陸上風力発電に適した立地の特徴
陸上風力発電は、山稜部や海岸沿いなど地形の起伏を活かして安定した風を得やすい場所が向いています。風の力を効率よく回転エネルギーに変える風力発電の仕組み上、地形による風向きの乱れが少ないことも重要な条件です。 道路を使って部品を運搬できる立地であれば、建設コストを比較的抑えやすい点も特徴です。
一方で日本は山がちな地形が多く、ヨーロッパのように広範囲で安定した偏西風が得られる地域は限られています。 条件に合う候補地そのものが少ないことが、陸上風力発電における立地選定の課題です。
洋上風力発電に適した立地の特徴
洋上風力発電は、土地の制約を受けにくく大型の風車を導入しやすい立地条件を持っています。障害物のない洋上では風況が極めて安定しているため、陸上よりも優れた風力発電の発電効率を引き出しやすいメリットがあります。 基礎を海底に固定する着床式は、水深60メートル未満の海域が適地とされています。
日本周辺の海域は急に水深が深くなる地形が多いため、着床式に向いた浅い海域は限られています。 そこで数千メートル級の大水深でも設置できる浮体式が、日本の海域に適した方式として注目されています。
| 方式 | 適した水深の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 着床式 | 水深60メートル未満 | 海底に基礎を固定、世界で主流の方式 |
| 浮体式 | 大水深でも設置可能 | 浮体構造物に風車を設置、日本の海域に適する |
2019年に施行された再エネ海域利用法により、国内の複数海域が洋上風力発電の促進区域に指定されています。
立地選定から稼働までの流れ
風力発電の立地選定は、候補地の絞り込みから稼働開始まで長期にわたるプロセスです。特に洋上風力の場合は、漁業調整や施工コストなどの洋上風力発電のデメリットになり得る要因を初期段階から洗い出す必要があります。 一般的には風況調査、環境アセスメント、系統連系の協議、設計・輸送計画という順序で進みます。
- NEDO局所風況マップと現地観測で候補地を絞り込む
- 環境影響評価法に基づく方法書・準備書の審査を受ける
- 電力会社と系統連系の協議を行う
- 部品輸送計画と建設工事を実施し、稼働を開始する
環境アセスメントが必要な案件では、着工までの準備期間だけでおよそ4年、稼働までを含めると8年前後を見込む必要があります。 立地条件を早期に見極めておくことが、事業計画全体のスケジュール管理にもつながります。
まとめ:風力発電の立地条件は風況・インフラ・環境配慮で見極める
風力発電の立地条件は、年間平均風速6メートル毎秒以上という風況の目安から、土地面積や輸送路、送電線への接続といったインフラ条件、さらに住宅地との距離や環境アセスメントまで多岐にわたります。これらを精査し、最適な設備や風力発電の発電方法を選択することが、事業を成功に導く鍵です。 陸上風力と洋上風力でも適した立地の特徴は異なり、着床式と浮体式のどちらが向くかは水深によって変わってきます。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 立地条件でもっとも重要なのは年間平均風速6メートル毎秒以上の風況
- 土地面積・輸送路・送電線接続などインフラ条件の確認が欠かせない
- 陸上と洋上、着床式と浮体式で適した立地条件は異なる
これらの条件を順番に確認していくことで、候補地が事業化に適しているかを早い段階で判断できるようになります。 立地選定でお悩みの際は、専門家への相談を通じて具体的な候補地の評価を進めてください。
風力発電の立地条件に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
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監修者
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