カーボンネガティブとは?意味や技術、企業の取組事例を解説
この記事のポイント
カーボンネガティブは吸収量が排出量を上回る状態で、差し引きゼロのカーボンニュートラルの先を目指す考え方です。植林やBECCS、DACCSなどのネガティブエミッション技術で実現し、マイクロソフトや花王、ブータンなどが取り組んでいます。
「カーボンネガティブという言葉を見かけるようになったが、カーボンニュートラルと何が違うのか。どんな技術で実現し、どの企業が取り組んでいるのかを知りたい」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
本記事の内容
- カーボンネガティブの意味と関連用語との違い
- 実現を支えるネガティブエミッション技術
- 企業や国の具体的な取り組み事例
カーボンネガティブは、二酸化炭素の吸収量が排出量を上回る状態で、カーボンニュートラルの先を目指す考え方です。
この記事を読めば、カーボンネガティブの意味や技術、事例が体系的にわかり、脱炭素の最新動向をつかめます。まずは基本の意味から確認していきましょう。
カーボンネガティブとは
カーボンネガティブとは、二酸化炭素の吸収量が排出量を上回る状態です。カーボンニュートラルからさらに一歩進んだ考え方といえます。ここでは意味と、混同しやすい用語との違いを整理します。
排出量より吸収量が多い状態
カーボンネガティブは、排出する二酸化炭素よりも、吸収する量のほうが多い状態を指します。排出と吸収を均衡させるカーボンニュートラルの仕組みを土台としつつ、差し引きで見ると、大気中の二酸化炭素を減らす方向に働きます。
実現するには、排出を減らすだけでは足りません。森林による吸収や回収技術を使い、排出量を超える量を取り除く必要があります。
カーボンニュートラルとの違い
そもそもカーボンニュートラルとは、排出量と吸収量が釣り合い、差し引きゼロになる状態です。これに対しカーボンネガティブは、吸収量が排出量を上回ります。
| 用語 | 排出量と吸収量の関係 |
|---|---|
| カーボンニュートラル | 排出量と吸収量が等しい |
| カーボンネガティブ | 吸収量が排出量を上回る |
つまりカーボンネガティブは、カーボンニュートラルよりも踏み込んだ、より積極的な状態を表します。
カーボンポジティブとの違い
カーボンポジティブという言葉も使われます。これは吸収量がプラスになっている点に注目した表現です。
カーボンネガティブが排出量のマイナスに注目するのに対し、カーボンポジティブは吸収量のプラスに注目します。焦点は異なりますが、二つは同じ状態を指しています。
カーボンネガティブが注目される背景
カーボンネガティブが注目される背景には、気候変動への強い危機感があります。カーボンニュートラルだけでは足りないという認識が広がっています。ここでは注目の理由を三つの視点から解説します。
地球温暖化とパリ協定の影響
注目の出発点は、地球温暖化の深刻化です。気温上昇を抑えるための対策が、世界的に急がれています。
2015年のパリ協定は、気温上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力目標を掲げました。この目標の達成に向け、各国で進められるカーボンニュートラル政策においても、排出を減らすだけでなく、大気中の二酸化炭素を取り除く取り組みが強く求められています。
カーボンニュートラルの先を目指す動き
カーボンニュートラルは差し引きゼロを目指す考え方であり、カーボンニュートラルと脱炭素の違いを正しく認識したうえで、排出削減だけでは達成できないゼロの先を目指す動きが広がっています。しかし、すでに大気中にある二酸化炭素は減りません。
そこで、実質ゼロの先にある吸収量が排出量を上回る状態が求められるようになりました。カーボンネガティブは、過去に蓄積された二酸化炭素にも向き合う取り組みとして注目されています。
企業の脱炭素経営との関係
カーボンネガティブは、企業の脱炭素経営とも深く関わります。実質ゼロを超える目標を掲げることは、環境への強い姿勢を示すことになり、対外的な評価の向上といった脱炭素のメリットを最大化するアプローチとなります。
先進的な企業は、カーボンニュートラルの達成後にカーボンネガティブを目指す方針を打ち出しています。こうした目標は、投資家や消費者からの評価にもつながります。
カーボンネガティブを実現するネガティブエミッション技術
カーボンネガティブの実現には、大気中の二酸化炭素を取り除く技術が欠かせません。これらはネガティブエミッション技術と呼ばれます。ここでは代表的な手法を三つのグループで解説します。
植林やブルーカーボンによる吸収
まず自然の力を使う方法があります。植林や再生林は、樹木が成長する過程で二酸化炭素を吸収します。
海の生態系を活かすブルーカーボンも注目されています。海藻や藻場が二酸化炭素を吸収し、貯留する仕組みです。土壌に炭素を蓄える方法や、鉱物の風化を促す方法もあります。
BECCSとDACCS
より工学的な技術として、BECCSとDACCSがあります。どちらも二酸化炭素を回収して地中に貯める技術ですが、実用化に向けた設備コストやエネルギー消費量が大きく、解決すべきカーボンニュートラルの課題でもあります。
| 技術 | 仕組み |
|---|---|
| BECCS | バイオマス発電で出た二酸化炭素を回収し貯留する |
| DACCS | 大気中から二酸化炭素を直接回収し貯留する |
BECCSは植物が吸収した炭素を利用します。DACCSは空気そのものから二酸化炭素を集める点に特徴があります。
カーボンネガティブコンクリート
素材の分野でも技術開発が進んでいます。その一つがカーボンネガティブコンクリートです。
製造の過程で二酸化炭素を取り込み、固定するコンクリートです。建設分野は排出量が大きいため、こうした素材はカーボンネガティブへの貢献が期待されています。
カーボンネガティブに取り組む企業と国の事例
カーボンネガティブは、すでに具体的な取り組みが始まっています。先進的な企業や国が目標を掲げ、実現へ動いています。ここでは代表的な事例を紹介します。
マイクロソフトの目標
海外で先行するのがマイクロソフトです。2030年までにカーボンネガティブを達成する目標を掲げています。
あわせて、二酸化炭素を取り除く技術の開発に10億ドルの基金を設けました。実質ゼロの先を見据えた、積極的な取り組みとして知られています。
日本企業の取り組み
日本企業でも動きが広がっています。最先端のカーボンニュートラルの取り組みを進める花王は、2021年に、2040年までにカーボンゼロ、2050年までにカーボンネガティブを目指すと表明しました。
クボタは、稲わらやもみ殻などの農業廃棄物を高温で処理し、炭素を固定する技術を開発しています。ソニーグループも、実質ゼロの先を見据えた目標を掲げています。
カーボンネガティブを実現した国
国の単位で実現している例もあります。代表がブータンです。豊かな森林による吸収量が、産業活動からの排出量を大きく上回っています。
ブータンでは、二酸化炭素の吸収量が排出量の約3倍にのぼります。憲法で国土の6割以上を森林と定め、過度な開発を防いでいることが背景にあります。
まとめ:カーボンネガティブはカーボンニュートラルの先を目指す取り組み
本記事では、カーボンネガティブの意味や関連用語との違い、実現技術、企業と国の事例を解説しました。カーボンネガティブは吸収量が排出量を上回る状態で、差し引きゼロのカーボンニュートラルからさらに一歩進んだ考え方です。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- カーボンネガティブは吸収量が排出量を上回る状態を指す
- 植林やBECCS、DACCSなどのネガティブエミッション技術で実現する
- マイクロソフトや花王、ブータンなど企業と国が取り組んでいる
カーボンネガティブを理解すれば、脱炭素の最新の潮流と自社が目指せる方向性が見えてきます。まずはカーボンニュートラルの達成を土台に、その先を見据えることが大切です。
脱炭素経営の進め方やカーボンネガティブへの取り組みを相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。具体的な資料もご用意しています。
カーボンネガティブに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
関連記事
GX-ETSはいつから?2026年度開始の対象企業とスケジュール
GX-ETSがいつから始まるかを2026年度の本格稼働に向けて解説します。対象企業の基準や初年度の手続き、今から準備すべき対応まで整理しました。
GX推進法とは?5つの施策と2026年の改正をわかりやすく解説
GX推進法とは脱炭素と経済成長の両立を目指す日本の基本法です。5つの主要施策や排出量取引の仕組み、2026年改正の影響をわかりやすく解説します。
グリーントランスフォーメーション事例を業界別と規模別に紹介
グリーントランスフォーメーションの事例を業界別と規模別に解説します。鉄鋼や化学から中小企業の進め方まで、自社の脱炭素のヒントが見つかります。
SXとは?DX・GXとの違いや進め方を2026年最新版で徹底解説
SXとは企業と社会の持続可能性を両立する経営変革です。DX・GXとの違いや背景、メリットと進め方まで2026年最新情報でわかりやすく解説します。
ブルーカーボンとは?意味や種類・仕組みをわかりやすく解説
ブルーカーボンとは何かを、生態系の種類や仕組み、グリーンカーボンとの違い、メリットや課題、企業の脱炭素への活用までわかりやすく解説します。
GX基本方針とは?内容と企業の取り組みを徹底解説【2026年】
GX基本方針とは、政府が2023年に閣議決定した脱炭素と経済成長を両立する指針です。内容や柱、企業が自社のGXの方針を定める進め方を解説します。