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ネイチャーポジティブとは?意味や背景・企業の取り組みを解説

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この記事のポイント

ネイチャーポジティブとは、2030年までに生物多様性の損失を止め自然を回復軌道に乗せる世界目標。温室効果ガスを扱うカーボンニュートラルに対し自然資本を対象とし、昆明・モントリオール生物多様性枠組やTNFDを背景に、企業には自然との関係性の評価と情報開示が求められる。

ネイチャーポジティブとは?意味や背景・企業の取り組みを解説

「ネイチャーポジティブとは何かがよく分からず、自社の経営にどう関わるのか判断できない」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • ネイチャーポジティブの意味とカーボンニュートラルとの違い
  • 求められる背景と国際的な動向
  • 日本の取り組みと企業に求められる対応

ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道に乗せる考え方です。脱炭素に続く世界目標として、企業経営にも深く関わりはじめています。

本記事を読めば、ネイチャーポジティブを自社の戦略にどう位置づけるかまで具体的に判断できるようになります。基礎から順を追って見ていきましょう。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道に乗せる考え方です。日本語では自然再興と訳され、社会や経済の活動が自然に与えてきた負の影響を反転させ、プラスの状態へ導くことを目指します。まずは言葉の意味と、脱炭素との関係を整理します。

ネイチャーポジティブの意味と定義

ネイチャーポジティブとは、2020年を基準として自然の損失を食い止め、回復へと向かわせることを指します。2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ、2050年までに自然と共生する社会を実現するという時間軸が国際的な共通目標になっています。

言葉自体は、自然を意味するネイチャーと、前向きな状態を表すポジティブを組み合わせたものです。気候変動分野のネットゼロに相当する目標を、生物多様性や自然資本の分野で掲げるために生まれた概念とされています。

カーボンニュートラルとの違い

そもそもネイチャーポジティブとカーボンニュートラルは、扱う対象と目指す方向が異なります。前者が自然の損失を止めて回復へ反転させるのに対し、後者は温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする状態を指します。また、排出量を上回る削減や吸収を行うカーボンネガティブとも概念的な共通点や相違点があり、企業は気候変動と生物多様性という2つの危機に同時に取り組むことが重要とされています。

項目ネイチャーポジティブカーボンニュートラル
主な対象生物多様性や自然資本温室効果ガス
目指す状態自然の損失を止めて回復へ反転排出量を実質ゼロに
中心となる問い自然への影響をどう回復させるか排出をどう減らすか

カーボンニュートラルが排出を減らして中立を目指すのに対し、ネイチャーポジティブはマイナスの状態からプラスへ転換させる点に特徴があります。減らすだけでなく、自然を積極的に増やす発想が求められます。

自然資本や生物多様性とのつながり

自然資本とは、森林や水、土壌、生物といった自然が生み出す価値の源泉を指します。企業活動の多くは原材料や水などを自然資本に依存しており、生物多様性の損失は事業の持続性を脅かすリスクになります。

世界経済フォーラムは、世界のGDPの約半分に相当する価値が自然への依存と関わっていると指摘しています。自然資本の劣化を放置すれば経済基盤そのものが揺らぐという認識が、ネイチャーポジティブへの関心を後押ししています。

ネイチャーポジティブが求められる背景

ネイチャーポジティブが求められる背景には、生物多様性の急速な損失と、経済が自然に依存しているという事実があります。自然の劣化は事業のリスクになり、投資家や市場も企業の対応を注視しはじめました。ここでは3つの視点から背景を整理します。

深刻化する生物多様性の損失

生物多様性は世界的なペースで失われています。生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームは、約100万種の動植物が絶滅の危機にあると警告しました。

損失の主な要因は5つあるとされています。

  • 陸と海の利用の変化
  • 生物の直接的な採取や乱獲
  • 気候変動
  • 汚染
  • 外来種の侵入

人間の活動の拡大がこれらの要因を強めてきました。自然の回復力が追いつかない状態が続けば、生態系が生み出す恵みそのものが損なわれてしまいます。

経済活動と自然資本の依存関係

経済活動は、原材料や水、気候の安定など自然資本の恵みに支えられています。食品や医薬品、建設など幅広い産業が、自然が生み出す資源やサービスを前提に成り立っています。

自然資本が劣化すると、原材料の供給不足やコスト増を通じて事業に影響します。生物多様性の損失は環境問題であると同時に、企業にとって無視できない財務リスクになりつつあります。

高まる社会と市場からの要請

投資家や金融機関は、企業が自然にどう向き合っているかを評価しはじめました。既存のカーボンニュートラルの課題への対策だけでなく、自然関連財務情報開示タスクフォースが2023年9月に公表した情報開示フレームワークへの対応も、日本を含む多くの企業で進められています。

取引先や消費者からの期待も高まっています。自然への配慮を経営に組み込むことが、企業の信頼や競争力を左右するテーマになってきました。

ネイチャーポジティブをめぐる国際的な動向

ネイチャーポジティブは、国際的な合意を背景に世界の潮流となりました。生物多様性の新たな世界目標や、自然に関する情報開示の枠組みが相次いで整い、企業の行動を促しています。ここでは主要な3つの動きを紹介します。

昆明・モントリオール生物多様性枠組

昆明・モントリオール生物多様性枠組は、2022年12月のCOP15で採択された生物多様性の新しい世界目標です。2010年の愛知目標の後継にあたり、2030年に向けた23の行動目標が定められました。

この枠組は、2030年までに生物多様性の損失を止めて回復に転じるネイチャーポジティブの達成を掲げています。世界共通のゴールとして、各国の政策や企業の取り組みの土台になっています。

30by30という保全目標

30by30は、2030年までに陸と海の少なくとも30%を健全な生態系として保全する国際目標です。海の吸収源であるブルーカーボンの保全とも深く関わっており、昆明・モントリオール生物多様性枠組の行動目標のひとつに位置づけられています。

対象には、国立公園などの保護地域だけでなくOECMも含まれます。OECMとは保護地域以外で生物多様性の保全に役立つ地域のことで、企業が管理する緑地なども貢献の場になります。日本では、こうした場所を自然共生サイトとして認定する制度が2023年に始まりました。

TNFDによる情報開示の広がり

自然関連財務情報開示タスクフォース、通称TNFDは、企業が自然に関するリスクと機会を評価し開示するための枠組みです。2023年9月に最終提言が公表され、ガバナンス、戦略、リスクとインパクトの管理、指標と目標という4つの柱で構成されています。

評価の手法として、対象地の特定から診断、評価、準備へ進むLEAPアプローチが示されています。気候変動分野のTCFDと整合性が高く、自然版の開示基準として世界の企業や金融機関に広がっています。

日本におけるネイチャーポジティブの取り組み

日本も国際的な合意を受けて、ネイチャーポジティブの実現に向けた政策を進めています。国家戦略の策定や経済への移行戦略、地域での取り組みが動き出しました。ここでは代表的な3つの動きを見ていきます。

生物多様性国家戦略2023-2030

生物多様性国家戦略2023-2030は、2023年3月に閣議決定された国の基本計画です。昆明・モントリオール生物多様性枠組を踏まえ、2030年のネイチャーポジティブの実現を目標に掲げています。

この戦略は5つの基本戦略で構成されています。

  • 生態系の健全性の回復
  • 自然を活用した社会課題の解決
  • ネイチャーポジティブ経済の実現
  • 生活や消費活動における行動変容
  • 取り組みを支える基盤整備と国際連携

生物多様性の損失と気候危機という2つの危機への統合的な対応と、30by30目標の達成を重点に置いています。

ネイチャーポジティブ経済移行戦略

ネイチャーポジティブ経済移行戦略は、2024年3月に環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の4省が連名で公表しました。国が進めるカーボンニュートラル政策とも深く連動し、自然の保全を経済の成長につなげる考え方を示したものです。

この戦略では、自然を守る経済へ移行することで2030年時点で年間約47兆円のビジネス機会が生まれると試算されています。企業が得られる多様な脱炭素のメリットとも相乗効果を発揮しながら、自然資本への依存と影響を重要課題として経営に統合する、ネイチャーポジティブ経営の広がりを後押しする内容です。

自治体や地域で広がる動き

地域レベルでも取り組みが進んでいます。環境省は、企業や自治体などが管理する生物多様性の豊かな土地を自然共生サイトとして認定する制度を設けました。認定された区域はOECMとして30by30目標の達成に貢献します。

2025年4月には、この制度を法制化した地域生物多様性増進法が施行されました。豊かな自然を維持する活動に加え、荒れた土地を回復させる活動や開発跡地に自然を創り出す活動も対象になっています。

企業に求められるネイチャーポジティブの対応

ネイチャーポジティブの実現には、企業の行動が欠かせません。自然への影響を把握し、目標を立てて開示し、実際の活動へつなげる流れが求められています。ここでは企業が取るべき対応と事例を紹介します。

事業活動と自然の関係性を評価する

最初の一歩は、自分たちの事業が自然にどう依存し、どんな影響を与えているかを知ることです。原材料の調達や水の利用など、事業と自然のつながりを洗い出す作業が出発点になります。

TNFDは、この評価にLEAPアプローチという手順を示しています。対象地の特定から、依存と影響の診断、リスクと機会の評価、開示に向けた準備へと進める流れです。まず自社と自然の関係を可視化することが、次の行動の土台になります。

情報を開示し目標を設定する

関係性を把握したら、その内容を投資家や社会に開示します。TNFDの枠組みに沿った開示は、企業の透明性を高め、資金調達や取引の面でも評価につながります。

あわせて、科学的な根拠に基づく目標を設定する動きも広がっています。自然に関する目標を掲げる SBTs for Nature のような枠組みを使い、いつまでに何を達成するかを明確にします。開示と目標設定を組み合わせることで、取り組みの実効性が高まります。

企業の取り組み事例

実際に多くの企業がネイチャーポジティブ経営を進めています。代表的な事例を整理します。

企業主な取り組み
キリンホールディングスいち早くTNFDに基づく開示を実施し、遊休地をブドウ畑に転換して生態系を再生
サントリーホールディングス天然水の森として水源の森林を保全し、水源涵養に関する目標を設定
花王持続可能な調達を進め、自然が事業に与える影響の分析と開示に取り組む

自社で発電設備や広い緑地を持たない企業でも、調達方針の見直しや情報開示から始められます。日常のカーボンニュートラルの取り組みと並行して、自然への配慮を経営に組み込むことが、これからの企業価値を支える取り組みになります。

まとめ:ネイチャーポジティブとは自然の損失を止め回復へ導く世界目標

ここまで、ネイチャーポジティブとは何かという基本から、カーボンニュートラルとの違い、求められる背景、国際的な動向、日本の取り組み、企業に求められる対応までを解説してきました。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • ネイチャーポジティブとは生物多様性の損失を止め自然を回復へ反転させる世界目標
  • 昆明・モントリオール生物多様性枠組やTNFDを背景に国内でも政策と経済移行が進む
  • 企業は自然との関係性を評価し開示と目標設定を通じて経営に組み込むことが求められる

本記事を通じて、ネイチャーポジティブとはどのような考え方で、自社の経営にどう活かせるかを具体的に判断できるようになったはずです。

ネイチャーポジティブへの対応や自然資本の評価について詳しく相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。資料請求からも、検討に役立つ情報を確認できます。

ネイチャーポジティブに関するよくある質問

参考文献

  1. 昆明・モントリオール生物多様性枠組(環境省)
  2. 生物多様性国家戦略2023-2030(環境省)
  3. ネイチャーポジティブ経済移行戦略について(環境省)

執筆者

Green With 編集部
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編集部

Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。

監修者

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Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。

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