地熱発電の将来性を解説・課題と次世代技術動向【2026年版】
この記事のポイント
地熱発電は世界3位の資源量を持ちながら、開発コストや国立公園規制の壁で導入量は世界10位にとどまるが、政府は2030年度に150万kW規模を目標に掲げ、規制緩和とクローズドループなど次世代技術の実用化で将来性は着実に高まっている。
「地熱発電に将来性はあるのだろうか、投資や事業として関わる価値があるのか知りたい」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
本記事の内容
- 地熱発電の仕組みと日本の導入状況
- 地熱発電のメリットとデメリット
- 将来性を左右する政策・規制・技術の動き
結論から言うと、地熱発電は課題を抱えながらも技術革新と政策支援によって着実に将来性を高めています。
開発コストや規制といった不安の正体を理解すれば、地熱発電がなぜ今後の再生可能エネルギーの主力候補になり得るのかが見えてきます。ここから順を追って解説します。
地熱発電とは?仕組みと日本の現状
地熱発電とは、地下深くのマグマ熱で生まれる蒸気や熱水を利用して発電する仕組みです。天候や時間帯に左右されず安定した出力を得られるため、他の再生可能エネルギーの種類とは異なる独自の特性を持つ電源として位置づけられています。地熱発電の将来性を考えるうえでは、まず仕組みと日本の現状を正しく把握することが欠かせません。
地熱発電の仕組みと発電方式
地熱発電には主に2つの方式があります。
| 発電方式 | 適した熱源温度 | 特徴 |
|---|---|---|
| フラッシュ方式 | 200度以上の高温蒸気 | 地下からくみ上げた蒸気で直接タービンを回す |
| バイナリー方式 | 80度から150度程度の中低温 | 沸点の低い作動流体を介して間接的にタービンを回す |
フラッシュ方式は日本最大の地熱発電所である八丁原発電所(大分県九重町)でも採用されており、設備容量は11万キロワットに達します。一方でバイナリー方式は低温の熱源でも発電が可能なため、これまで開発対象にならなかった地域にも活用の幅を広げています。
日本の地熱資源量と導入量の現状
日本の地熱資源量は約2300万キロワットで、アメリカ・インドネシアに次ぐ世界3位の規模です。これほど豊富な資源を持ちながら、2024年3月末時点の国内導入量は65万キロワット程度にとどまります。
資源量は世界3位でも設備容量は世界10位にとどまっているのが実情です。政府は2030年度までに150万キロワット規模への引き上げを目標に掲げており、現状の導入量から見ると2倍以上の拡大が必要になります。
世界における地熱発電の導入状況
世界に目を向けると、地熱発電の設備容量が最も大きいのはアメリカで、インドネシアが続きます。日本は資源量こそ世界3位ですが、導入量では上位国に大きく水をあけられています。
背景には、地熱資源の多くが国立公園や温泉地に集中しており、開発規制や地元合意の壁が導入拡大を妨げてきた事情があります。次章以降では、こうした課題を踏まえたうえで地熱発電の将来性を具体的に見ていきます。
地熱発電のメリットとデメリット
地熱発電には優れた特長がある一方、克服すべき課題も残されています。両方を正しく理解することが、将来性を見極める土台になります。
地熱発電のメリット
地熱発電の設備利用率は70%以上に達し、太陽光発電の約14%、風力発電の約20%と比べて格段に高い水準です。天候や時間帯に左右されず、24時間安定した発電を続けられる点が最大の強みといえます。
ライフサイクル全体で見たCO2排出量も1キロワット時あたり13グラム程度にとどまり、石炭火力の約70分の1という低さです。加えて、燃料を輸入に頼らない純国産のエネルギー源であることも、エネルギー安全保障の観点から評価されています。
気象条件に左右されない安定した発電量
- 石炭火力の70分の1程度という低いCO2排出量
- 輸入に依存しない国産エネルギー源
地熱発電のデメリットと課題
一方で、地熱発電には開発面での大きなハードルがあります。地下の資源量は掘削してみないと正確にわからないため、調査から稼働まで10年を超える開発期間がかかることも珍しくありません。
初期投資も大きく、掘削に失敗すれば費用が回収できないリスクを事業者が負うことになります。開発できる場所も、国立公園や温泉地に集中しているため、景観保護や地元の温泉事業者との調整が必要になる場合が多くあります。
開発から稼働まで長期間を要する
- 掘削の不確実性による投資リスク
- 立地が国立公園や温泉地に偏り調整が必要
こうした課題こそが、地熱発電の将来性を左右する要因になっています。次の章では、その要因を具体的に見ていきます。
地熱発電の将来性を左右する要因
地熱発電の将来性は、政府の政策目標、規制の緩和、そして次世代技術の実用化という3つの要因によって左右されます。地熱発電の特徴や現状をふまえつつ、それぞれの動向を確認していきます。
政府が掲げる2030年度の導入目標
政府は2030年度のエネルギー需給見通しで、地熱発電を総発電電力量の1.0パーセントから1.1パーセント程度まで引き上げる方針を掲げています。導入量にすると150万キロワット前後の水準で、現状の65万キロワットから2倍以上への拡大が必要になる計画です。
自然条件に左右されず安定運用できる電源として、政府が地熱発電を再生可能エネルギーの主力候補に位置づけていることがうかがえます。一方で、この目標達成に向けた開発加速は、他方式を含めた再生可能エネルギーのデメリットや課題を早期に解決するインセンティブともなります。
普及を妨げる国立公園規制とコストの壁
日本の地熱資源量の約半分は、国立・国定公園の特別地域内に存在するとされています。かつては特別保護区だけでなく広い範囲で開発が制限されていましたが、1994年以降、環境省は段階的に規制を緩和してきました。
2021年には自然公園法の改正により、第二種・第三種特別地域の地表部にも工作物の設置が認められるようになり、規制する立場だった環境省が開発を後押しする立場へと変化しています。ただし特別保護区と第一種特別地域では、地表部の開発は依然として禁止されたままであり、これらの制約と開発費用の大きさは、再生可能エネルギーのコスト比較を困難にする要因となっています。
次世代地熱発電がもたらす技術革新
経済産業省は2025年に「次世代型地熱推進官民協議会」を発足させ、電力会社や建設会社、金融機関など70社を超える事業者が参加しています。地下に人工的な配管を構築して熱水を作り出すクローズドループ方式や、より深部の高温岩体を利用する技術の開発が進められています。
政府は2050年までに次世代型地熱発電を118地域で開発する構想を示しており、2035年から2050年にかけて約7.7ギガワットの導入を目指す計画です。従来の蒸気利用型では開発できなかった場所にも発電の可能性が広がりつつあり、これは従来の地熱発電のメリット・デメリットの定義を大きく書き換えるものと期待されています。
地熱発電の将来性を高める取り組み
大規模開発の課題を補う形で、地域と連携した小規模なバイナリー発電や公的な支援策が広がっています。これらは、地下資源を活用する地熱発電の仕組みを地域社会に適応させる上で欠かせない取り組みであり、こうした動きが地熱発電の将来性をさらに後押ししています。
バイナリー発電による開発余地の拡大
バイナリー発電は、温泉の源泉そのものを枯渇させることなく、給湯設備の一部として発電できる点が特徴です。岐阜県の奥飛騨温泉郷では出力40キロワットの設備が稼働し、約100世帯分の電力を生み出しています。福島県の土湯温泉でも源泉の蒸気と熱水を活用し、年間1億円以上を売り上げる規模まで成長しました。
このように、大規模なフラッシュ発電が難しい中低温の温泉地でも、バイナリー発電なら開発の余地が広がります。これは、導入の柔軟性と稼働安定性を両立する再生可能エネルギーの特徴や仕組みを具現化した代表的な事例です。
企業や自治体による地域連携の事例
小規模地熱発電では、温泉組合や自治体が発電事業に主体的に関わる例が増えています。奥飛騨温泉郷では地元の温泉組合が源泉を管理し、日常点検も請け負うことで給湯と発電を一体的に運用しています。新潟県十日町市の松之山温泉でも、自治体と地域企業が共同で売電事業を運営し、収益を地域に還元する仕組みを構築しました。このような地域一体型モデルは、今後の持続可能な再生可能エネルギーの発電方法における一つの成功パターンとなり得ます。
2022年度からは、出力2000キロワット未満の小規模地熱に関するFIT(固定価格買取制度)の要件に地域活用要件が加えられ、発電した電気や熱を地域の防災計画に役立てることが求められるようになっています。
- 温泉組合や自治体が発電事業に参画
- 売電収入を地域の観光振興や防災に活用
- 発電後の温泉水を養殖などに再利用する事例も
規制緩和と支援策の動き
JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)は、地熱調査や掘削調査にかかる費用の一部を助成する制度を運用しており、2026年度も資源量調査事業への助成が実施されています。このような行政支援や法整備の状況は、他電源と合わせた総合的な再生可能エネルギーの比較でも極めて注目されるポイントです。あわせて、地熱開発の金融支援においても審査制度が刷新され、案件ごとのリスクに応じた柔軟な評価が可能になりました。
国立公園内の規制緩和と合わせて、資金面・技術面の支援体制が整いつつあることが、地熱発電の将来性を具体的な形で裏づけています。
まとめ:地熱発電は課題を克服しながら将来性を高めている
地熱発電は、安定した出力と低いCO2排出量という強みを持ちながら、開発コストや立地規制という壁に直面してきました。政府は2030年度に150万キロワット規模への導入拡大を目指し、国立公園での規制緩和や次世代型技術の実用化を後押ししています。これに伴い、設備ごとの地熱発電の発電効率の改善と開発コスト削減が、将来を決定づける重要な技術的目標となっています。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 地熱発電は世界3位の資源量を持ちながら導入量は世界10位にとどまる
- 開発コストと規制が課題である一方、緩和と支援策が進んでいる
- バイナリー発電や次世代型技術が地熱発電の将来性を押し広げている
本記事を読むことで、地熱発電の将来性を漠然としたイメージではなく、政策・技術・地域事例という具体的な根拠から判断できるようになったはずです。
地熱発電への理解をさらに深め、事業や地域での活用を検討したい方は、お気軽にお問い合わせください。
地熱発電の将来性に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
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