地熱発電のメリット・デメリットと今後の展望を解説【2026】
この記事のポイント
地熱発電のメリットは、天候に左右されない安定発電と低いCO2排出量、純国産エネルギーである点です。デメリットは開発コストと期間の長さ、立地の制約です。近年は次世代地熱技術や規制緩和により、デメリットの克服が進みつつあります。
「地熱発電を導入したいけれど、メリットとデメリットの両方をしっかり比較してから判断したい」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 地熱発電の仕組みと種類
- 地熱発電のメリットとデメリット
- 日本の現状と導入・活用のポイント
地熱発電のメリットとデメリットを一言でまとめると、安定した国産クリーン電源である一方、開発コストと期間の大きさが課題です。
本記事を読み進めれば、地熱発電のメリットとデメリットを整理したうえで、自社の再エネ活用や投資判断に生かせる知識が得られます。ぜひ最後までご覧ください。
地熱発電とは?仕組みと種類をわかりやすく解説
代表的な再生可能エネルギーの種類の一つである地熱発電は、地下深くにたまった熱エネルギーを利用して電気をつくる発電方法です。地熱発電のメリットとデメリットを理解するには、まずこの仕組みを知ることが欠かせません。
地球内部の熱を使うため、天候や季節に左右されにくいベースロード電源です。日本は火山国であり地熱資源に恵まれているため、2026年現在も再生可能エネルギーの有力な選択肢として注目されています。
地熱発電の仕組み
地熱発電は、地下1000メートルから3000メートル付近にある地熱貯留層から熱エネルギーを取り出す仕組みです。地熱貯留層は火力発電所のボイラーにあたる役割を持ち、雨水が地下深くに浸透して高温の熱水や蒸気になったものが蓄えられています。
発電所では坑井と呼ばれる井戸を掘り、地熱貯留層から地熱流体を取り出します。取り出した地熱流体は気水分離器で蒸気と熱水に分けられ、蒸気の力でタービンを回して発電機を動かす仕組みです。
役目を終えた蒸気は復水器で冷却され、熱水とともに還元井を通じて再び地中深くへ戻されます。この循環により、資源を枯渇させることなく繰り返し利用できます。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 坑井の掘削 | 地熱貯留層まで井戸を掘り地熱流体を取り出す |
| 気水分離 | 地熱流体を蒸気と熱水に分離する |
| 発電 | 蒸気でタービンを回し発電機を稼働させる |
| 還元 | 使用後の熱水を還元井から地中に戻す |
フラッシュ発電の特徴
フラッシュ発電は、200度以上の高温の地熱流体が得られる場所で採用される方式です。地熱流体中の蒸気を直接利用してタービンを回すため、発電効率に優れます。
日本の地熱発電所の多くはシングルフラッシュ発電方式を採用しています。気水分離器で分けた熱水をさらに減圧してもう一段階蒸気を取り出すダブルフラッシュ発電では、出力を10から25パーセントほど高められます。
高温の資源が必要になるため、導入できる地域は火山帯や地殻活動が活発なエリアに限られます。
バイナリー発電の特徴
バイナリー発電は、150度以下の中低温の地熱流体でも発電できる方式です。水よりも沸点が低いアンモニアなどの媒体を地熱流体で加熱し、その媒体の蒸気でタービンを回します。
温泉と同程度の100度前後の熱源でも発電でき、既存の温泉地の景観を大きく損なわずに導入しやすいのが特徴です。高温の蒸気が得にくい地域でも活用できるため、地熱発電の適地を広げる方式として注目を集めています。
フラッシュ発電とバイナリー発電を組み合わせれば、地域ごとの熱源の特性に応じた効率的な発電が可能になります。
地熱発電のメリット
地熱発電のメリットとデメリットを比較するとき、まず押さえておきたいのがメリットの大きさです。安定性・国産エネルギーとしての強み・環境負荷の低さという3つの観点から、他の再生可能エネルギーと比べても優れた特長を持っています。
| メリット | 内容の目安 |
|---|---|
| 安定した発電 | 設備利用率は約70%以上 |
| 燃料調達リスクの低さ | 純国産エネルギーで輸入不要 |
| 環境負荷の低さ | ライフサイクルCO2排出量は約13g-CO2/kWh |
| 資源の持続性 | 熱水を還元し繰り返し利用できる |
天候に左右されず安定して発電できる
地熱発電は地下のマグマ熱源を利用するため、天候や時間帯の影響を受けません。設備利用率は約70%以上と、太陽光発電の約14%や風力発電の約20%と比べて格段に高い水準です。
24時間365日にわたり発電できることから、電力需給の土台を支えるベースロード電源として位置づけられています。天候に左右される太陽光や風力を補完する役割も期待されています。
純国産エネルギーで燃料調達リスクが少ない
地熱発電は燃料を必要としないため、化石燃料のような輸入リスクや価格変動リスクがありません。日本は原油の海外依存度が高く、エネルギー安全保障の面でも国産電源の価値は大きいといえます。
海外情勢の変化による燃料コストの高騰を受けにくく、長期的に安定した電力供給を見込める点も強みです。
CO2排出量が少ない
地熱発電のライフサイクルCO2排出量は約13g-CO2/kWhで、太陽光発電の約38g-CO2/kWhや風力発電の約25から26g-CO2/kWhよりも低い水準です。石炭火力と比べると数十分の1程度に抑えられます。
脱炭素社会の実現に向けて、環境負荷の少ない電源として地熱発電への期待が高まっており、こうした低炭素性は再生可能エネルギーの特徴や仕組みを語る上で欠かせない重要な要素です。
資源が枯渇しにくい
地熱発電は、使用後の熱水を還元井から地中に戻す仕組みを採用しています。地熱貯留層に熱エネルギーが供給され続ける限り、資源を枯渇させることなく繰り返し利用できます。
化石燃料のように採掘して使い切る資源ではないため、数ある再生可能エネルギーの発電方法の中でも、長期的な視点で持続可能なエネルギー源として高く評価されています。
地熱発電のデメリット
続いて、課題となる面を確認します。開発コスト・立地条件・環境への配慮という3つの視点から、地熱発電の特徴や現状も考慮しつつ、地熱発電の主なデメリットを整理します。
| デメリット | 内容の目安 |
|---|---|
| 開発コストの高さ | 発電規模により数十億から百数十億円規模 |
| 開発期間の長さ | 調査開始から稼働まで10年以上かかることも |
| 立地の制約 | 資源の多くが自然公園内に存在する |
開発に時間とコストがかかる
地熱発電所の建設には高額な初期費用がかかります。発電規模によっては百億円を超える費用が必要になり、井戸の掘削だけでも1本あたり数億円規模のコストが発生します。
開発期間も長く、調査から発電所の稼働まで10年以上を要するケースが少なくありません。地表調査や環境アセスメントに数年単位の時間がかかるため、投資回収までの期間が長期化しやすい点が課題であり、これは再生可能エネルギーのコスト比較を考える上でも最も慎重に検討すべき要素の一つです。
開発できる立地が限られる
地熱発電に適した資源は、火山帯や地殻活動が活発な地域に集中しています。日本の地熱資源の多くは自然公園の地下に存在しており、自然公園法による規制の対象になる場所が少なくありません。
適した立地であっても、開発の許可を得るまでに時間や調整を要することがあり、これは他方式を含めた総合的な再生可能エネルギーの比較においても設置の難易度を高める要因となっています。
自然環境や景観に影響を与える
地熱発電所は蒸気や熱水を大量に取り扱うため、周辺の温泉資源や自然環境への影響が懸念されることがあります。温泉の湯量や泉質への影響を心配する地域住民や温泉事業者から、建設に反対の声が上がるケースもあります。
送電線や建屋が景観を損なう可能性もあるため、事業者は目立ちにくい配色の採用や植生による景観の復元など、周辺環境への配慮を求められます。地域との丁寧な合意形成が重要なテーマです。
地熱発電デメリットの克服策と最新の技術動向
前章のデメリットに対して、克服に向けた動きも進んでいます。基本となる地熱発電の仕組みを進化させる技術開発と、政策支援の両面から、地熱発電の普及を後押しする取り組みを紹介します。
開発期間の短縮に向けた技術開発が進む
近年は、超臨界地熱やEGSと呼ばれる次世代地熱発電技術の開発が世界的に加速しています。海外では大手テック企業が次世代地熱の実用化に大きな投資を行っており、掘削技術や貯留層モデリングの進歩によって開発期間の短縮が期待されています。
日本国内でも、CO2を熱媒体に用いたクローズドループ式地熱発電の実証が進められています。こうした技術が実用化されれば、調査から稼働までの期間短縮につながる見通しです。
バイナリー発電で活用できる資源が広がる
バイナリー発電の実用化により、これまで活用が難しかった中低温の地熱資源でも発電が可能になりました。温泉と同程度の熱源でも導入できるため、開発できる立地の幅が広がっています。
技術の進歩によって発電効率も向上しており、小規模な熱源を生かした地域分散型の地熱発電が広がりつつあります。
政府による支援制度が後押しする
日本の地熱資源の多くは国立・国定公園内に存在しており、以前は開発が厳しく制限されていました。近年は環境省による規制緩和が進み、地表に工作物を設置する開発が一部の特別地域でも許可されるようになっています。
環境アセスメントを迅速化する取り組みも進んでおり、調査から開発までの期間短縮に寄与しています。JOGMECによる資源量調査の拡充や、地域理解を深める広報活動も、開発を後押しする支援策の一つです。
日本における地熱発電の現状と今後の展望
ここからは、日本国内の現状に目を向けます。国内ポテンシャルを測る上で重要な地熱発電の将来性や課題を踏まえつつ、電源構成に占める割合や具体的な発電所の事例、今後の政策の方向性を確認していきます。
日本の電源構成に占める割合
2025年に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度の再生可能エネルギー比率を電源構成全体の4割から5割程度に高める方針が示されています。そのうち地熱発電は1から2パーセント程度の位置づけです。
火山国である日本には豊富な地熱資源がありますが、電源構成に占める割合は太陽光や風力と比べるとまだ小さい水準にとどまっています。次世代地熱の技術が実用化されれば、この割合はさらに拡大する可能性があります。
国内の主な地熱発電所の事例
大分県九重町にある八丁原発電所は、日本最大規模の地熱発電所です。1977年に1号機が運転を開始し、その後2号機とバイナリー発電施設が加わり、総出力は11万キロワットに達しています。
新たな開発計画も進んでいます。同じ大分県九重町では湯坪地熱発電所の建設が計画されており、2030年ごろの運転開始が見込まれています。こうした新規案件の積み重ねが、日本の地熱発電の拡大を後押ししていますが、設備運用にあたっては地熱発電の発電効率の維持管理も重要な課題となります。
今後の普及に向けた課題
第7次エネルギー基本計画では、次世代型地熱発電が地熱ポテンシャルを現状の4倍以上に拡大しうる技術として位置づけられました。2040年までに1.4ギガワット、2050年までに7.7ギガワットの開発が目標として掲げられています。
目標達成には、開発期間の短縮や国立公園内の規制緩和、地域住民との合意形成といった課題への継続的な取り組みが欠かせません。技術開発と政策支援を両輪として進めることが、今後の普及の鍵を握ります。
地熱発電の導入・活用を検討するときのポイント
最後に、実際に導入や活用を検討する際に押さえておきたいポイントを整理します。企業として関わる場合と投資として関わる場合の両方の視点から解説します。
自社の再エネ調達における位置づけを確認する
企業が再エネを調達する方法には、電力購入契約であるPPAの活用や、再エネ電力証書の購入などいくつかの選択肢があります。地熱発電は天候に左右されない安定した電源であるため、太陽光や風力と組み合わせることで再エネ電力全体の安定性を高められます。
自社がどの程度の再エネ比率を目指すのか、どの調達方法が事業形態に合うのかを整理したうえで、地熱発電をどう位置づけるかを検討することが大切です。
メリットとデメリットを踏まえて投資を判断する
地熱発電への投資には、地質リスク・環境リスク・資金調達リスクなどが伴います。地熱資源の評価が難しく、掘削しても期待した熱源が得られない可能性がある点には注意が必要です。
一方で、長期的に安定した収益が見込める点は大きな魅力です。他方式にも共通する再生可能エネルギーのデメリットやリスク要因、買取制度の期間や利回りの前提条件を確認し、開発期間の長さも踏まえたうえで投資判断を行うことが求められます。
情報収集を行い専門家に相談する
地熱発電に関する投資や導入を検討する際は、日本政策金融公庫の環境・エネルギー対策資金や、JOGMECの助成金といった支援制度の活用も選択肢になります。制度の内容や評価基準は複雑なため、事前の情報収集が欠かせません。
専門家や金融機関に相談しながら、自社の状況に合った計画を立てることで、地熱発電のメリットを生かしつつデメリットのリスクを抑えた活用につなげられます。
まとめ:地熱発電はメリットとデメリットを踏まえて計画的に活用しよう
本記事では、地熱発電の仕組みと種類から始まり、メリットとデメリット、克服に向けた技術動向、日本の現状と導入時のポイントまで解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 地熱発電は安定した設備利用率と低いCO2排出量が強み
- 開発コストと期間の長さ、立地の制約がデメリット
- 技術開発と政策支援によりデメリットの克服が進んでいる
本記事を読んだことで、地熱発電のメリットとデメリットを踏まえたうえで、自社の再エネ調達や投資判断に必要な視点が整理できたはずです。
地熱発電の活用を具体的に検討したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
地熱発電のメリットとデメリットに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
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