地熱発電とは?仕組みとメリット・デメリットを解説【2026】
この記事のポイント
地熱発電はマグマの熱でつくる蒸気でタービンを回す純国産の再生可能エネルギーで、設備利用率は約70〜80%と高く天候に左右されず安定発電できる。開発には10〜15年と高コストがかかる一方、次世代技術と政策支援で拡大が見込まれる。
「地熱発電という言葉はよく聞くけれど、どんな仕組みで発電していて、太陽光や風力とは何が違うのだろう」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 地熱発電の仕組みと発電方式
- 地熱発電のメリットとデメリット
- 日本の地熱発電の現状と今後の展望
地熱発電は、地下のマグマ熱で生まれる蒸気を使ってタービンを回す、日本国内で自給できる再生可能エネルギーです。
天候に左右されず安定して発電できる一方、開発には時間とコストがかかるという課題もあります。本記事を読めば、地熱発電の仕組みから日本の現状、太陽光発電や風力発電との違いまで整理して理解できます。ぜひ最後まで読み進めてください。
地熱発電とは?仕組みをわかりやすく解説
主要な再生可能エネルギーの種類の一つである地熱発電とは、地下深くに蓄えられたマグマの熱エネルギーを利用して電気をつくる発電方法です。井戸を通じて取り出した蒸気でタービンを回すため、燃料を燃やす火力発電とは異なる仕組みで発電します。日本は火山国であり、世界でも有数の地熱資源量を持つため、純国産のエネルギー源として注目されています。
マグマの熱で蒸気をつくる仕組み
地下1000メートルから3000メートル付近にはマグマの熱で温められた地熱貯留層があります。地上に降った雨水が地下深くまで浸透し、マグマの熱によって高温高圧の熱水や蒸気に変化します。この熱水や蒸気が地熱貯留層に蓄えられ、地熱発電のエネルギー源となります。
地熱貯留層に井戸を掘ると、圧力の差によって蒸気や熱水が地上に噴出します。噴出した蒸気でタービンを回転させ、発電機を動かすことで電気が生まれます。
地熱発電に使われる主な設備
地熱発電所には、蒸気を取り出す生産井、発電後の熱水を地下に戻す還元井、蒸気の圧力でタービンを回すタービン発電機などの設備があります。
| 設備名 | 役割 |
|---|---|
| 生産井 | 地熱貯留層から蒸気や熱水をくみ上げる |
| セパレーター | 蒸気と熱水を分離する |
| タービン発電機 | 蒸気の力でタービンを回し発電する |
| 還元井 | 使用後の熱水を地下に戻す |
還元井によって熱水を地下に戻すことで、地熱貯留層の圧力や水量が保たれ、資源を枯渇させにくい仕組みになっています。
地熱貯留層と井戸掘削の役割
生産井の深さは主に1500メートルから2000メートルとされ、掘削には高度な技術と長い期間が必要です。掘削した井戸と地熱貯留層を通路として水が循環するため、条件が整えば半永久的に熱エネルギーを取り出せます。
一方で、地熱貯留層の位置や規模は掘削してみないと正確にわからないことが多く、開発には調査と時間がかかります。この特性が、後述する地熱発電の課題にもつながっています。
地熱発電の発電方式の種類
地熱発電には、地下から取り出す蒸気や熱水の温度に応じて複数の方式があります。日本国内ではフラッシュ発電とバイナリー発電が主に採用されています。
フラッシュ発電
フラッシュ発電は、200度以上の高温の地熱流体を利用する方式です。地熱貯留層からくみ上げた蒸気と熱水をセパレーターで分離し、蒸気の力でタービンを直接回して発電します。
日本の地熱発電所の多くは、この方式のうち蒸気と熱水を一度だけ分離するシングルフラッシュ方式を採用しています。仕組みがシンプルで扱いやすい点が特徴です。
バイナリー発電
バイナリー発電は、80度から150度程度の中低温の熱水を利用する方式です。水よりも沸点が低い媒体を熱水で加熱して蒸発させ、その蒸気でタービンを回します。
高温の蒸気を確保しにくい温泉地などでも導入しやすく、既存の温泉施設と組み合わせて発電する事例もあります。フラッシュ発電では活用しきれない中低温の熱資源を有効活用できる方式です。
ダブルフラッシュ発電
ダブルフラッシュ発電は、シングルフラッシュ方式で分離した熱水をさらに減圧し、低圧の蒸気を追加で取り出してタービンを回す方式です。
高圧蒸気と低圧蒸気の両方を利用するため、シングルフラッシュ方式と比べて出力が高くなる傾向があります。高温高圧の地熱流体が得られる地点で採用が検討されていますが、システムが複雑になる点は再生可能エネルギーのデメリットに挙げられる保守管理コスト増加などの課題にも通じます。
地熱発電のメリット
地熱発電には、他の再生可能エネルギーにはない安定性と環境性能があります。ここでは、導入の判断材料となる地熱発電のメリット・デメリットのうち、代表的な4つのメリットを解説します。
天候に左右されず安定して発電できる
地熱発電は地下のマグマ熱を熱源とするため、天候や季節、時間帯の影響を受けません。設備利用率はおよそ70から80パーセントとされ、太陽光発電の10から14パーセント、風力発電の25から35パーセント前後と比べて高い水準です。
24時間365日安定して稼働できることから、電力の基盤となるベースロード電源としての役割が期待されています。このような電源としての高い自立性は、再生可能エネルギーの特徴や仕組みを語る上で欠かせない重要な優位性です。
CO2をほとんど排出しない
地熱発電のライフサイクルCO2排出量は1キロワット時あたり約13グラムとされ、太陽光発電の約38グラムや風力発電の約25グラムと比べても低い水準です。石炭火力発電の約943グラムと比較すると、その差は歴然としています。
発電時に燃料を燃やさない仕組みのため、環境に配慮した再生可能エネルギーの発電方法として、脱炭素社会の実現に向けた電源に位置づけられています。
純国産のエネルギーで資源を確保できる
日本は世界有数の火山国であり、地熱資源量は世界第3位とされています。海外からの燃料輸入に頼らず、国内の資源だけで発電できる点は、エネルギー安全保障の観点からも大きな利点です。
化石燃料のように国際情勢や為替の影響を受けにくく、長期的に安定した電源を確保しやすくなります。この自給率の高さは、他電源と合わせた総合的な再生可能エネルギーの比較でも極めて強力なアドバンテージとなります。
蒸気や熱水を多目的に活用できる
地熱発電で使用した蒸気や熱水は、発電後もハウス栽培や融雪、温浴施設などに再利用できます。地域の農業や観光業と組み合わせることで、発電以外の経済的な価値も生み出せます。
こうした多目的利用は、地域と共生しながら地熱資源を活用する取り組みとして各地で広がっています。
地熱発電のデメリットと課題
安定した電源として期待される地熱発電ですが、普及を妨げるいくつかの課題も存在します。これらを克服するためには、地下からエネルギーを取り出す地熱発電の仕組みへの正確な理解が不可欠です。
開発に時間とコストがかかる
地熱発電は、資源調査から運転開始までに10年から15年程度かかるのが一般的です。地下の資源量は掘削してみないと正確に把握できないため、調査だけでも5年前後を要します。
出力3万キロワット規模の建設費は237億円ほどとされ、1キロワットあたりの建設費は太陽光発電や風力発電の2倍から4倍にのぼります。初期投資の回収に長い期間がかかる点は、事業者にとって大きな負担であり、これが再生可能エネルギーのコスト比較において地熱開発の参入障壁が高いとされる大きな要因です。
立地条件が限られる
地熱資源量の約8割は国立公園や国定公園の内部にあるとされています。自然公園法による開発規制があるため、資源が豊富でも発電所を建設できない地域が少なくありません。
2015年の規制緩和により一部の特別地域で開発が認められるようになりましたが、依然として建設可能な立地は限定的です。景観や自然環境への配慮も引き続き求められます。
温泉事業者や地域住民との調整が必要
地熱発電の適地は、既に温泉地として利用されている場所と重なることが多くあります。温泉の湯量や泉質への影響を懸念する声があるため、開発前に地域との丁寧な合意形成が欠かせません。
国内ではこれまで地熱開発が原因で温泉が枯れた事例は確認されていませんが、不安を払拭するための説明や情報公開が開発の前提条件となっています。
日本の地熱発電の現状
日本は世界有数の地熱資源を持つ一方、実際の活用は資源量に見合っていないのが現状であり、これに伴う日本の地熱発電の将来性や課題については多角的な議論が存在します。
日本の地熱資源量と発電所数
日本の地熱資源量は約2300万キロワットとされ、世界第3位の規模です。しかし、実際に稼働している地熱発電所の設備容量は合計で約52万キロワットにとどまり、世界順位では第10位となっています。
発電所は東北地方や九州地方など、火山や地熱地帯が多い地域に集中しています。資源量に対して活用が進んでいない背景には、開発コストの高さや立地規制といった課題に加え、そもそも地熱発電の発電効率が他電源に比べて原理的に低いことも影響しています。
主要な地熱発電所の事例
国内最大の地熱発電所は、大分県にある八丁原発電所です。1号機と2号機を合わせた出力は11万キロワットで、日本の地熱発電を代表する施設のひとつです。
このほか岩手県や秋田県、鹿児島県などにも地熱発電所があり、地域の観光や農業と連携した取り組みも見られます。
世界における日本の地熱発電の位置づけ
世界の地熱資源量ではアメリカ、インドネシアに次いで日本が第3位に位置しています。一方で、地熱発電の設備容量ではアメリカやインドネシア、フィリピンなどが上位を占め、日本は資源量ほど発電に活かせていません。
豊富な資源を持ちながら発電への活用が限定的な状況は、今後の開発余地の大きさを示しているともいえます。
地熱発電の今後の展望
政府は次世代型の地熱発電技術に力を入れており、日本の地熱発電はこれから拡大が期待される分野です。
次世代地熱技術への期待
次世代型の地熱発電技術には、クローズドループ方式やEGS、超臨界地熱の3つがあります。EGSは人工的に地下に亀裂をつくり、水を循環させて熱を取り出す技術です。
超臨界地熱は、従来の地熱資源よりさらに深い地下4キロメートルから6キロメートル、温度400度から600度の熱源を活用する技術です。実現すれば、従来の地熱発電よりはるかに大きな出力が期待できます。
政策やGX推進による普及の動き
資源エネルギー庁は次世代型地熱推進官民協議会を設置し、次世代型地熱発電のロードマップづくりを進めています。2035年から2040年ごろに現在の約3倍にあたる約140万キロワット、2050年ごろには約18倍の約770万キロワットの開発を目標としています。
第7次エネルギー基本計画でも、次世代地熱技術を2030年代前半に実用化する方針が示されており、GX推進の一環として地熱発電への投資拡大が見込まれています。
新規開発地点の掘削調査の広がり
超臨界地熱については、2030年ごろまでに掘削調査を完了し、出力や資源特性を確認する計画が進められています。海外でもニュージーランドが実証井の掘削を予定するなど、国際的に開発競争が進んでいます。
こうした調査の広がりによって、これまで開発が難しかった地点でも新たな地熱資源の活用が可能になると期待されています。
太陽光発電や風力発電との違い
同じ再生可能エネルギーでも、地熱発電と太陽光発電、風力発電では発電コストや安定性に違いがあります。
発電コストの比較
発電コストの試算では、太陽光発電がおよそ8円から12円、陸上風力発電がおよそ10円から17円、地熱発電がおよそ10円から11円程度とされています。地熱発電は他の再生可能エネルギーと比べても遜色のない水準です。
| 電源 | 発電コストの目安 | 設備利用率の目安 |
|---|---|---|
| 地熱発電 | 10円〜11円/kWh | 70%〜80% |
| 太陽光発電 | 8円〜12円/kWh | 10%〜14% |
| 陸上風力発電 | 10円〜17円/kWh | 25%〜35% |
ただし地熱発電は探査や掘削のリスクが大きく、初期投資の負担が重い点には注意が必要です。
発電の安定性の違い
太陽光発電は日射量、風力発電は風況によって出力が変動しやすい電源です。一方、地熱発電は天候や時間帯に左右されず、安定した出力を保てます。
設備利用率で見ると、地熱発電はおよそ70から80パーセントと、太陽光発電の10から14パーセント、風力発電の25から35パーセントを大きく上回ります。ベースロード電源として活用しやすい点が、地熱発電の大きな強みです。
環境や景観への影響の違い
太陽光発電はパネル設置による景観や土地利用への影響、風力発電は騒音や鳥類への影響が課題として挙げられます。地熱発電は自然公園内での立地規制や、温泉事業者との調整が主な課題です。
いずれの電源も一長一短があり、地域の条件や目的に応じて適した電源を選ぶことが求められます。
まとめ:地熱発電は安定供給できる純国産の再生可能エネルギー
ここまで、地熱発電の仕組みや発電方式、メリットとデメリット、日本の現状や今後の展望について解説しました。地熱発電は、マグマの熱でつくられる蒸気を利用し、天候に左右されず安定して発電できる純国産のエネルギーです。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 地熱発電はマグマの熱で蒸気をつくり、フラッシュ発電やバイナリー発電でタービンを回す仕組み
- 設備利用率が高く安定発電できる一方、開発コストと期間の長さ、立地規制が課題
- 次世代地熱技術と政策の後押しにより、今後の開発拡大が期待される
本記事を通じて、地熱発電の基本的な仕組みから日本の現状、太陽光発電や風力発電との違いまで、体系的に理解いただけたのではないでしょうか。
地熱発電をはじめとする再生可能エネルギーの活用について、さらに詳しく知りたい方や自社の脱炭素戦略に取り入れたい方は、お気軽にお問い合わせください。
地熱発電に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
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