カーボンニュートラル企業一覧・業種別の取り組み事例を解説
この記事のポイント
カーボンニュートラル企業一覧は業種別に整理でき、国内はトヨタや日本製鉄、味の素、海外はAppleやMicrosoftが目標を掲げます。取り組みは排出量の把握から始め、再エネ導入や省エネで段階的に進めるのが基本です。
「カーボンニュートラルに取り組む企業一覧を知りたいけれど、どの企業が何をしているのか整理できず、自社の参考にどう活かせばいいのかもわからない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 業種別に見るカーボンニュートラル企業一覧と取り組み内容
- 海外の先進企業による脱炭素の事例
- 企業が取り組むメリットと進め方の基本ステップ
カーボンニュートラルに取り組む企業一覧は、業種別に整理することで自社との比較がしやすくなります。
本記事を読めば、国内外の企業の具体的な取り組みから、自社が脱炭素を進める際のヒントまでを一度に把握できます。ぜひ最後までご覧ください。
カーボンニュートラルに取り組む企業一覧の全体像
カーボンニュートラルに取り組む企業一覧を理解するには、まず言葉の意味と背景の把握が欠かせません。近年は業種を問わず多くの企業が脱炭素へ動いており、その全体像を押さえることで自社の参考にしやすくなります。
カーボンニュートラルの基本的な意味
そもそもカーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きでゼロにする状態です。排出を完全になくすのではなく、削減しきれない分を森林吸収や除去技術で相殺する考え方となっています。
日本政府は2020年に「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、企業もこの目標に沿った長期の削減計画を進めています。対象となるのは二酸化炭素だけでなく、メタンやフロンなどを含む温室効果ガス全体です。
企業がカーボンニュートラルに取り組む理由
企業がカーボンニュートラルに取り組む理由は、規制対応と競争力強化の両面にあります。国際的な脱炭素の流れが加速するなか、自社に合ったカーボンニュートラルの取り組みを進めなければ、対応の遅れが事業リスクに直結するためです。政府の宣言によってカーボンニュートラルがいつから動き出したのかを意識し、早めに対応することが求められています。
具体的な動機には次のようなものがあります。
- 取引先や投資家からの排出量削減の要請
- ESG評価の向上による資金調達環境の改善
- 省エネによるエネルギーコストの抑制
- 気候変動に伴う原材料調達リスクへの備え
大企業だけでなく、サプライチェーンを通じて中小企業にも取り組みが広がっています。取引先の削減目標に組み込まれる形で、対応を求められる場面が増えている状況です。
企業の取り組みを後押しする枠組み
企業の脱炭素を後押しする枠組みには、国内制度と国際イニシアチブがあります。国が進めるカーボンニュートラル政策や、様々な環境経営の枠組みを整理すると次のとおりです。
| 枠組み | 内容 |
|---|---|
| GXリーグ | 経済産業省が主導する官民共創の枠組み。参画企業が自主的な削減目標を掲げる |
| GX-ETS | GXリーグ下の排出量取引制度。2026年度から本格稼働 |
| SBT | パリ協定の水準と整合した削減目標を企業が設定する国際イニシアチブ |
| RE100 | 事業で使う電力を2050年までに再生可能エネルギー100%にする企業連合 |
GXリーグには2026年1月時点で727者が参画し、日本の温室効果ガス排出量の5割以上を占めています。2026年度からは年間10万トン以上を排出する企業に排出量取引制度への参加が義務づけられ、取り組みの裾野がさらに広がる見通しです。
業種別に見るカーボンニュートラルの取り組み企業一覧
カーボンニュートラル企業一覧は、業種別に整理すると自社との比較がしやすくなります。ここでは日本を代表する企業の取り組みを、製造業、小売、運輸、食品の4分野に分けて紹介します。
主要企業の目標をまとめると次のとおりです。
| 企業名 | 業種 | 主な目標 |
|---|---|---|
| トヨタ自動車 | 製造業 | 世界の自社工場のCO2排出を2035年に実質ゼロ |
| 日本製鉄 | 素材産業 | 2050年カーボンニュートラル、2030年に対2013年比30%削減 |
| 花王 | 素材産業 | 2050年に排出量を上回る削減を目指すカーボンネガティブ |
| セブン&アイ・ホールディングス | 小売業 | 店舗運営のCO2を2050年までに実質ゼロ |
| 三井不動産 | サービス業 | 2050年度カーボンニュートラル |
| 阪急阪神ホールディングス | 運輸業 | 2050年度に温室効果ガス実質ゼロ |
| 味の素グループ | 食品業 | 2050年度までにGHG排出量を正味ゼロ |
製造業と素材産業の取り組み
製造業と素材産業は、排出量が大きいため踏み込んだ目標を掲げています。ものづくりの現場でエネルギーを多く使う分、削減の余地も大きい分野です。
トヨタ自動車は、世界の自社工場のCO2排出量を2035年に実質ゼロとする計画を掲げ、当初の2050年から前倒ししました。日本製鉄は「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」のもと、2030年にCO2総排出量を2013年比で30%削減する中間目標を設定しています。花王は自社の排出量を上回るCO2を削減するカーボンネガティブを2050年に目指し、水素還元製鉄やカーボンリサイクルといった技術開発が各社の鍵となっています。
小売とサービス業の取り組み
小売とサービス業は、店舗や施設で使う電力の脱炭素化が中心です。多数の拠点を抱えるため、再生可能エネルギーへの切り替えが削減の要となります。
セブン&アイ・ホールディングスは環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を掲げ、店舗運営に伴うCO2排出量を2013年度比で2030年までに50%、2050年までに実質ゼロとする目標です。三井不動産は2050年度のカーボンニュートラルを掲げ、2030年度の削減目標を引き上げたうえで具体的な行動計画を策定しています。省エネ性能の高い建物や、太陽光発電の導入がこの分野の特徴です。
運輸とインフラ分野の取り組み
運輸とインフラ分野は、輸送や移動に伴うエネルギー消費の削減が課題です。電力の再エネ化と、車両や設備の省エネ化を組み合わせて進めています。
阪急阪神ホールディングスは2050年度に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。2025年4月からは阪急電鉄と阪神電気鉄道の全線で、列車運行と駅施設の電力を再生可能エネルギー由来に切り替える「カーボンニュートラル運行」を開始しました。この取り組みによる削減効果は年約20万トンで、グループ全体の排出量の約4割にあたります。
食品と飲料分野の取り組み
食品と飲料分野は、原料調達から製造、物流まで幅広い工程で排出が生じます。自社だけでなく、サプライチェーン全体での削減が重視される分野です。
味の素グループは2050年度までに温室効果ガス排出量を正味ゼロとするカーボンニュートラルを目標に設定し、SBTイニシアチブのNet Zero水準への適合を宣言しています。農産物を扱う企業では、原料生産段階の排出削減や、工場での再エネ導入が重要なテーマです。容器包装の見直しや食品ロスの削減も、業界全体で広がる取り組みとなっています。
カーボンニュートラルに取り組む海外企業の事例
カーボンニュートラルに取り組む企業一覧は、海外にも目を向けると先進的な事例が見えてきます。目標年を前倒ししたり、削減を超えて除去に踏み込んだりと、意欲的な動きが特徴です。
地域別の代表的な企業を整理すると次のようになります。
| 企業名 | 地域 | 主な目標 |
|---|---|---|
| Apple | 米国 | サプライチェーンと製品を2030年にカーボンニュートラル |
| Microsoft | 米国 | 2030年にカーボンネガティブを達成 |
| Amazon | 米国 | 事業全体を2040年にネットゼロ |
| IKEA | 欧州 | バリューチェーン全体を2050年にネットゼロ |
| Volvo Group | 欧州 | バリューチェーン排出を2040年にネットゼロ |
| Samsung | アジア | 2050年に全事業でネットゼロ |
米国企業の取り組み
米国の大手テック企業は、高い目標を掲げて業界をけん引しています。豊富な資金力を背景に、再生可能エネルギーの調達や除去技術への投資を進めています。
Appleは、サプライチェーンと製品を含めて2030年までにカーボンニュートラルを達成する計画です。Microsoftは排出量より多くのCO2を除去するカーボンネガティブを2030年に掲げ、Amazonは事業全体を2040年までにネットゼロにする「The Climate Pledge」を主導しています。この宣言には世界で300を超える企業が賛同しています。
欧州企業の取り組み
欧州企業は、自社の排出だけでなくバリューチェーン全体での削減を重視しています。製品の設計段階から排出を抑える発想が根付いている点が特徴です。
家具大手のIKEAは、2016年度を基準にバリューチェーン全体の温室効果ガスを2030年度までに半減し、2050年度にネットゼロを目指しています。商用車のVolvo Groupは、バリューチェーン排出量を2040年にネットゼロとする目標を掲げ、SBTイニシアチブの水準より10年早い達成を狙っています。再生可能エネルギーと電動化の両輪で削減を進める姿勢が共通しています。
アジア企業の取り組み
アジア企業もRE100への参加などを通じて脱炭素を加速しています。半導体や電機の分野では、製造に必要な電力の再エネ化が大きな課題です。
Samsungは2050年までに全事業でネットゼロを達成する環境戦略を掲げ、主力の家電部門は2030年にスコープ1と2の実質ゼロを目指しています。半導体受託製造のTSMCも、2050年までに世界の事業でネットゼロを達成する目標を設定しています。両社とも再生可能エネルギー100%を目指すRE100に参加し、アジア地域での再エネ需要を押し上げています。
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットと進め方
カーボンニュートラル企業一覧の取り組みを自社に活かすには、メリットと進め方の理解が役立ちます。他社の事例を参考にしながら、自社に合った形で段階的に始めることが大切です。
企業が得られる主なメリット
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットは、経営全体に及びます。単なる義務ではなく、企業競争力を高めるための脱炭素のメリットが企業価値の向上に直結する時代になっています。
主なメリットは次のとおりです。
- ブランドイメージの向上と社会的信頼の獲得
- ESG評価の高まりによる資金調達環境の改善
- 省エネによる光熱費や燃料費の削減
- 脱炭素を求める取引先との取引機会の維持
削減した排出量や再エネ利用の実績は、投資家や顧客への説得力ある説明材料となります。優秀な人材の採用でも、環境への姿勢が選ばれる理由になりつつあります。
取り組みを進める基本ステップ
カーボンニュートラルの取り組みは、段階を踏んで進めることで無理なく定着します。まずは排出と吸収のバランスを整えるカーボンニュートラルの仕組みを理解したうえで、現状を知り、削減策を実行する流れが基本です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①現状を把握する | Scope1、2、3に沿って排出量を算定し可視化する |
| ②目標と計画を立てる | 削減目標を定め、優先度の高い施策を選ぶ |
| ③施策を実行する | 省エネ設備の導入や再生可能エネルギーへの切り替えを進める |
| ④進捗を管理する | 実績を測定し、計画を見直しながら改善を続ける |
排出量はScope1が自社の直接排出、Scope2が購入した電力などの間接排出、Scope3がサプライチェーン全体の排出を指します。多くの企業がまずScope1と2の算定から着手しています。
取り組み時に直面しやすい課題
カーボンニュートラルの推進には、いくつかの共通した課題があります。自社におけるカーボンニュートラルの課題を事前に把握しておくことで、適切な対策を立てやすくなります。
代表的な課題は次のとおりです。
- 省エネ設備の導入などに伴う初期投資の負担
- 排出量の算定ルールが複雑で専門知識を要すること
- 会計とITの両方に通じた人材が不足していること
- Scope3の把握に取引先の協力が欠かせないこと
2026年度からは年間10万トン以上を排出する企業を対象に、排出量取引制度への参加が義務づけられます。制度対応を見据えた早めの準備が、今後の競争力を左右する要素となります。
まとめ:カーボンニュートラル企業一覧は業種別の取り組みで理解できます
本記事では、カーボンニュートラルに取り組む企業一覧を、国内の業種別事例、海外企業の事例、取り組みのメリットと進め方に分けて解説してきました。トヨタ自動車や味の素グループなど、多くの企業が2050年に向けた目標を掲げています。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 国内企業は製造業から食品まで業種別に脱炭素を進めている
- 海外企業は目標の前倒しやカーボンネガティブに踏み込んでいる
- 取り組みは排出量の把握から始め段階的に進めることが基本
企業一覧を業種別に整理できたことで、自社がカーボンニュートラルを進める際の方向性や、参考にすべき事例が見えてきたはずです。まずは自社の排出量を把握することから、脱炭素の一歩を踏み出せます。
カーボンニュートラルの進め方や脱炭素経営について詳しく相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
カーボンニュートラル企業一覧に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Green With編集部は、GX・脱炭素・Scope3・カーボンニュートラルなどの実務情報をわかりやすく発信する編集チームです。政策・技術・企業事例を調査し、AIを活用した制作と編集部による事実確認を組み合わせ、実務に役立つ信頼性の高いコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
Green With リサーチチームは、GX・脱炭素・Scope3・ESG・環境政策に関する国内外の一次情報を継続的に調査・分析する専門チームです。政府・業界団体・研究機関・企業の公開情報をもとに、記事の事実確認や専門性の担保、情報の正確性を監修しています。
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